第23話 ふたりで解決!


 桜子さんが満足して天に昇っていった。

 そして、残された茉莉と紡とヒロシさん。


「君たちは一体何者なんだ……!?」


 きっとヒロシさんは正気に戻ったんだろう。

 こんなアリエナイ話!


 怒られる!?

 茉莉は不安になったが、紡は静かに言った。


「我が闇土門家は、あやかしとにんげんを繋ぐ者…時ににんげん、時にあやかし……迷うものを助ける者……」


 紡が言うと、まるで強風が通り過ぎるように沢山のあやかしが一気に校舎を通り抜けていった。

『王子!』『あやかし王子!』『あやかしにんげん王子!』『王子!! かっこいーーーー!!』

 あやかし達が口々に叫んで囃し立て通り過ぎていった。

 まるで百鬼夜行だ……!

 茉莉は思う。


「僕は、あなたの記憶を消すこともできます。何事もなかったように、プレゼントのタイムカプセルをロッカーに戻すこともできます」


「闇土門君……」


「でも、そんな事はしたくない……俺は、あなたに今のことを覚えておいてほしいんです」


「紡……!! そうだよね、あのヒロシさん、用務員さん……今日のこと、誰にも……」


 オロオロしてしまう茉莉に、ヒロシさんは微笑んだ。


「いやいや、私は誰にも何も言うつもりはないよ。当然ながら君が特殊な王子様だと言うことがわかった。今回のことは御礼を言うしかできないよ……私の心にもずーっと心残りとしてあった事だから……本当にありがとう」


 ヒロシさんが礼をすると、また姿が六年生の少年に見えた。

 紡もやっと、安心したように息を吐いた。


「それでは僕達は帰ります」


「あぁ。一時間くらい学校について話をすると、校長先生には言っておいたから大丈夫だよ」


 ハッと家庭科室の時計を見ると、授業が終わってから一時間程度。

 もっともっと長い時間が過ぎたような気がしたのに……。


 ヒロシさんは大事そうに残った缶と自分宛てのプレゼントを持って、二人を玄関まで見送ってくれた。

 桜の花ももう、最後の花びらだろう。

 ヒラヒラと二人の頭を撫でるように舞い散る。


「あぁああああ~~~!! あ~~~!! あ~~~~~~~~っっ!!!」


 家へと歩きだしたけど、茉莉は思いっきり叫んだ。


「なんだ、驚くじゃないか」


「だって! だってぇ~!! なんか想いが爆発しちゃいそうだんだもん!! いや、爆発した!! 紡、すごく頑張ったよね! 私も頑張ったよね!!」

 

 涙が溢れそうになる。

 でも悲しいわけじゃなくて、頑張って、頑張った! 解決してよかった! っていう想いが込み上げてくる。


「あぁ、俺だけじゃ解決できなかった!! 茉莉のおかげだ! ありがとう!」


「……わ、私っうっうっ……よかったぁああ……ちゃんとできるか怖かった……怖かったんだよ……」


「うん、俺もさ」


「紡も……?」


「あぁ、茉莉が一緒に頑張ってくれたから俺も不安や恐怖を乗り越えられた」


「紡も不安だった……?」


「もちろんさ。さぁ帰ってお茶にしよう。祝いのパーティーだ」


「パーティー!?」


「そう! 盛大にね!!」


「わ! ちょっと! 見られたら恥ずかしいから!」


 グッ! と茉莉の手を握って笑いながら紡は走り出す。

 

「リボンをしてるから大丈夫さ」


「あっ……ま、まぁそうだね!!」


 茉莉も紡の手を握った。

 なんだ、誰かに見られたら恥ずかしいって気持ちがなくなったら本当は手を繋ぐって、自分もしたかったことなのかもと茉莉は思う。


「あはは!」


「はは……!」

 

 なんだかおかしくなっちゃって、紡の手を茉莉も更にぎゅっと握った。

 泣いたり笑ったり、心が忙しい!

 茉莉は一度家に帰って、すぐ紡の家へ行った。

 

「いらっしゃい」


「わぁ! すごい」


 紡の開店前のお店がパーティー用に飾られている。

 まだ品物が置かれていない棚には花とバルーン、ガーランドに紙でできた丸い飾りなどが輝いていた。


 そして紡は王子様みたいなピンクのスーツに着替えていた。

 

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