第20話 直撃!お話を聞こう!


 あれだけ夜中に大騒ぎしたのに、朝はスッキリ!

 いい夢を見た気分で寝不足にはなっていない。

 

「やっぱり夢じゃないんだ……」


 紡が夢じゃないってわかるように、と自分の紙を結っていた紙でできた髪飾りを枕元に置いていったのを覚えている。

 それが、やっぱり枕元にあった。


「ふふ……」


 何故か嬉しくなって、髪飾りを撫でた。

 そして今日も元気パワー!!

 朝ごはんをモリモリ食べて、今日はいつも週末に着ていたレースの着いたピンク色のシャツにスカートを履いてレギンスを履いた。

 少しずつだけど可愛いものを着て行こう!

 

「おはよう!」


「おはよう」


 紡は今日もスタイリッシュに自分の好きなリボンとピンク色で、ばっちり決まっていた。

 

「き、昨日はありがとう」


「俺のほうこそ。今日こそ花子さんにいい報告ができればいいな」


「うん!」


 今日は用務員さんに話をして、花子さんのプレゼント問題が解決するかもしれない!

 

「おはようございます」

「おはようございまーす!」

「おはようございます~~」


 校門前、みんなの元気な声が響く。

 今朝も用務員さんは掃除をしながら元気に挨拶をしてくれた。

 桜の花は今日も散っている。

 姿は見えないけれど、温かく見守ってくれる精霊を感じた気がした。


「あ、あの!」


「はい、おはようございます」


「おはようございます! あ、あの実は三本桜の事で……聞きたいことがあるんです」


「あぁ~校長先生から、昔の校庭について調べてる子がいるんだって聞いたんだよ。君たちだったんだね。三本桜の場所を知りたいの?」


「は、はい! 放課後にお話を伺ってもいいですか?」


「…………じゃあ校長先生にも伝えておくよ。放課後の見送りが終わってからね」


「ありがとうございます!!」


 少しの間、ヒロシさんはぼーっとしてから答えてくれた。

 茉莉と紡は御礼を言って玄関に行く。


「ねぇ、なにか術を使ったの?」


「あぁ。放課後に話を聞いてもらえるように……ちょっとね」


「うん。そうだよね。放課後居残りしていいか、わからないものね」


「此処で怪しまれてはうまくいかないからな……でもこれから心をどうにかする事はしない」


「伝わるように、頑張ろ!」


「あぁ!」


 二人で喋りながら、つい教室に入ってしまって案の定からかわれてしまった。

 でもなんだか、今は一緒にいることが恥ずかしいことなんかじゃないと茉莉は思う。

 仲間、コンビ、チーム……相棒? そんな言葉が思い浮かぶ。


 紡も茉莉も今日も放課後は遊べないとみんなに言った。


 今日こそ花子さんを解放してあげたい……!!

 そして放課後になった。


 ヒロシさんに会いに行く前に、紡に白いリボンを渡される。


「これは?」


「注目されにくくなる、人よけの術が施されているリボンだよ。手首に巻いて」


「わかった。ありがとう」


 数日で人気者になった紡は、歩いてるだけでみんなに声をかけられる。

 茉莉も紡も背が高いので目立つし、このリボンは安心だ。


 太陽は輝いているけど誰もいなくてガランとしている校庭。

 そこにヒロシさんがいるのが見えた。

 やはりプールの前にいる。

 

「おおい、こっちだよ」


「はーい!!」


 二人で走って駆け寄った。

 

「残念ながら三本桜は、このプールの敷地内にあったんだ」


「そうだったんですね」


「私が一年生の時に、みんなで植えて小さな三兄弟みたいな木だったんだが……私が卒業した後に二本ダメになってしまってね……一本あるのが今の校門にある桜の木だよ」


「三兄弟……」


 桜の木の精霊に間違いはなかった。

 でもそれは知っている。

 本当に聞きたいことはこれからだ。

 茉莉はちょっと緊張する。

 ドキドキしながら、ゆっくり話した。


「……あの、この木から北へ10メートルくらいの場所に……埋めたもの」


 ヒロシさんは、驚いたように目を丸くした。


「えっなぜ、それを」


「ヒロシさんは、それを掘り返しましたよね?」


 紡が更に言った言葉に、ヒロシさんは一歩後ずさる。

 怖くなったのかもしれない。


「き、君たち一体……?」


「タイムカプセルはまだ手元にありますか? ……私達はそれを探しているんです」


「さ、桜子ちゃんの親戚か、誰かなのかい? でも今まで何も……」


 やはり花子さんの名前は桜子だった!!

 でも何十年も昔の話だ。

 捨てている可能性もある。


「お願いします。答えてください。桜子さんへのプレゼントと手紙は……」


「……持っているよ。箱ごと……」


 やった!! と茉莉は嬉しさで飛び上がりそうになった。

 笑顔で紡を見るが、紡はまだ笑っていない。

 ふとヒロシさんを見ると、悲しそうな顔をしている。


「そのプレゼントを……見せていただくことはできませんか?」


「……どうして君たちが知っているのかわからないが、それはできないよ。だってあれは桜子ちゃんと開けるって、桜子ちゃんにあげるって決めて埋めたものだから」


 花子さん、桜子さんがいなくなった時の事を思い出したのかもしれない。

 茉莉はヒロシさんの悲しい顔を見て、心が痛む。


 幽霊の桜子さんのためなんです。と言いたいけど、そんな事を信じてくれるのだろうか?


 もふりんも心配そうに茉莉の肩で揺れる。

 どうしよう、なんて言えばいい。


「もう少しお話できますか? 来てほしい場所があるんです」


「えっ?」


「紡……どうするの?」


「行こう」


 紡は一体どうするつもりなんだろうか?

 




 

 

 

 

  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る