第15話 学校へ行こう!
次の日の朝。
お父さんはお母さんから、紡の話を聞いたらしい。
珍しく三人で朝食を食べて、家を出ることができそうだ。
今日はヘアバンドをしていくつもり!
「お隣さん、同じクラスの男の子なんだってなぁ」
「うん! もう仲良くなったよ」
「そうかスポーツ好きそうな感じか? お父さんも今度挨拶に……」
「スポーツも好きそうだったけど~~」
「フリルのシャツがすごく似合ってオシャレなイケメン君だったわよね!」
「フリル~?」
お父さんが、よくわからない顔をする。
茉莉のリボンやフリルやレースは応援してくれてはいるが、シンプルでスポーティーなものが好きなお父さん。
昔は休日におそろいのティーシャツなんかを着ていたから最近少し寂しそうなのだ。
「紡はすっごく自分のファッションを楽しんでて、可愛いものが好きだけど、すごく……か、かっこいいかもね!?」
お父さんが靴を履いている間に、玄関を飛び出した茉莉。
両親には見えないけど、もふりんが肩に乗っている。
「おはよう茉莉」
「つ、紡!? なんで!?」
爽やかに朝日を浴びた紡が立っていた。
キラキラと彼が輝いて見えるのは、朝日のせいだけではなさそうだ。
もふりんが嬉しそうに飛びついて、紡の頭に乗った。
「隣だし、一緒に学校行こうかと思って。おはようございます」
相変わらずサラッと言う紡。
そして茉莉の後ろにいるお父さんに、挨拶をした。
「君が、お隣の闇土門君! 茉莉を迎えに来てくれたのか! ……そうか……そうか……よ、嫁にはまだ……! 早いっう……うぐっ!」
何故か泣きそうになっている、お父さん。
「お父さん何言ってるの!? 恥ずかしい! ねぇお母さん~泣いてるお父さん連れて早く学校行って!」
「はいはい、紡君~おはよう! じゃあ茉莉もいってらっしゃい!」
「いってきます! 行こう!」
「それでは、いってまいります」
紡の子供っぽくない挨拶に、お母さんは関心したように微笑んだ。
そしてお父さんを連れて、二人それぞれの車に乗って家を出て行った。
せっかく迎えに来てくれたし、と学校へ向かって歩き始める。
若葉の香りと朝日が気持ちいい。
「はぁ~恥ずかしいー! お父さん、たまに変な事言い出すから」
「君が可愛いんだろうね」
「んもう、紡はなんかこう恥ずかしいって思う気持ちがないの?」
「恥ずかしい? 何故」
「あーもう、いいよ! 紡のお父さんとお母さんはどんな人?」
「闇土門家は人間とあやかしの間に生まれた一族で……父君は人間でいう閻魔様みたいな人の側近をしているよ。父君も治める国を与えられているから、一国の王でもある。だから、みんな俺を王子と呼ぶのさ」
「えっ……すごい……」
閻魔様の側近……茉莉はゴクリと唾を飲む。
「母君は身体を壊して特別な場所で療養……入院してゆっくりしてるよ」
「そうなの? 紡がこっちに来て……寂しくないのかな?」
「闇土門家では10歳になると、実際に人間の世界であやかしと人間の関わりを助ける修行をするんだ。母君も応援してくれているよ、お見舞いにも行くし」
「10歳で……はぁ。えらいね」
「茉莉だって、いつも留守番したりしてるだろう」
「うん、まぁ」
それでも紡はすごいと思ったけど、これ以上は恥ずかしいから何も言わないでいた。
でも今度夕飯にでも誘ってみようかな? と思う。
「おはようございます~!」
用務員さんが玄関で挨拶してくれる。
他の先生も元気に挨拶してくれる。
校長先生もいた。今日も可愛いコーギーが足元で尻尾を振っている。
「「おはようございます!!」」
茉莉も紡と元気に挨拶をした。
「今日の休み時間に、先生に学校の歴史を知りたいって聞いてみよ!」
教室へ向かう廊下で話す。
「うん。そうしよう」
「花子さん……あとどのくらい大丈夫なのかな」
「できるだけ早く解決した方がいい。俺のせいでもあるんだが、少し気の乱れが生じて花子さんのような霊が悪い影響を受けやすくなっている」
「紡のせいなの……?」
「もともとこの土地は不安定なのもあるんだが、俺が降りたせいで波が余計に立ってしまったって感じかな」
「仕方ないよ、修行のためだもん。頑張ろ!」
「あぁ」
「じゃ、ちょっと先に教室行ってて!」
「ん? ああ、わかった」
どうしたんだ? という顔をしたが紡は素直に先に教室へ入っていく。
さすがに一緒に教室に入るのは恥ずかしい!
今日もクラスメイト達は、元気いっぱいに集まった。
なんだか人数が増えたような怪しい瞬間もあったけど、紡が息を吹いたり、ウインクすると気配は消えた。
そして休み時間。
堀川先生に紡が聞いた。
「学校の歴史が知りたい……? まぁ、それは嬉しいことだわ。空き教室に学校の歴史のパネルを飾ってるところがあるのよ~。今日の昼休みに行きたい人を募って行きましょうか。校長先生も来るかも」
「やったー!」
「ありがとうございます」
「闇土門君とお家が隣同士なんですね。二人が仲良くしてくれて先生も嬉しいです」
「色々と助かっています」
「も、もう紡、恥ずかしいからって!」
先生が昼休みに学校の歴史教室に見学に行くことを伝えると、数人の女子が手を挙げた。
なかには、紡のファン! だと言ってる女子もいて茉莉はちょっとヒヤヒヤする。
茉莉は元気いっぱいで男子ともよく遊んでいたので、たまに『私の好きな◯◯君に近づかないで!』と言われる事もあったのだ。
恋なんてしたことのない茉莉には、そういう気持ちがよくわからなかった。
「花子さんも、恋して未練が残っちゃったんだもんね……」
女子に囲まれる紡を横目で見ながら、茉莉はボソッと呟いた。
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