第13話 紡の家は大豪邸!?
「これが俺の家だよ」
紡が指さしたのは、茉莉の家の隣のお店っぽい家だった!!
「えぇえっ!? 此処がぁ!?」
「うん、だから大丈夫だって言っただろ。ランドセル置いてきなよ。お茶を飲みながら花子さんの今後の計画を立てよう」
驚いたままの茉莉に、紡は笑って自分の家の前に歩いていく。
「ちょっと待ってよ! お父さんかお母さんは家にいるの?」
「あやかし世界の方の家にいるかな。色々忙しいんだ。親がいなくても気にすることはない、世話係の大人がいる」
「世話係の人……がお母さんのかわりなら大丈夫かな?」
「そうさ。待ってるよ」
なんだか色んな事がありすぎて、茉莉はもうびっくりびっくりびっくりしすぎたからか、ランドセルを置いて紡の家へ向かった。
あやかしにんげん王子には、自分の常識は通じない。
10秒。
10秒で着く隣の家。
「紡~来たよ」
チャイムもアンティークな感じで、可愛らしい。
「あぁ、いらっしゃい」
素敵な白い木の扉から紡が出てきた。
「入って、俺の店……予定へようこそ!」
「えっ……俺の店……!?」
確かに入った先は、靴のある玄関ではなかった。
店の中は外観を同じように、水色と白でまとめられている。
服をかざるためのデコルテやラック。白い可愛いテーブルもあるが品物はひとつもない。
「お店をやるの? 紡が?」
「あぁ、俺が作った雑貨やアクセサリー、服を人間もあやかしも幽霊も買い物できる店を開店させるのが俺の夢だ……!」
「えぇっ……すごい! ……で、でもあやかしも幽霊も??」
まさかの言葉にギョッとする。
「あぁ、この土地はちょうど色んなものたちが行き来するのに都合のいい場所だったんだ」
「えー!? そうだったの!? そんな怖い場所が家の隣に……前に住んでた人は大丈夫だったのかな」
「色々と……あっただろうけどね、今は俺が住むことに決めたから悪いものはこないよ」
「そ、そっか良かった! ……でもあやかしとか幽霊も買い物するんだね」
「可愛くて素敵なものは、みんな好きさ。それで心を慰めて、自分の行くべき場所へ行ってもらいたいんだ……もちろん普通にオシャレとして着れる服や小物だよ」
まだ何もない店内だけど、ワイワイ素敵な笑顔で可愛い小物を見ている人やあやかしが見えた気がした。
「素敵な夢……!! 紡がお店をやるんだぁ……すごい……!」
「まだまだ修行しないとだけど。みんなが俺のリボンやフリルやレースであしらった小物やドレスを身に着けてくれたら最高に嬉しいなって思うのさ」
「紡の作ったドレス……」
「まだ、そこまでの技術はないんだ。でもいつか……叶えたい夢なんだ」
「うん! うん! 応援するよ!」
「ありがとう。茉莉の作ったものも置いたらいい」
「わ、私のー!? まだ並縫いしか覚えていないのに!」
「並縫いができれば、なんでもできるさ」
茉莉の心は更にワクワクする。
「お坊っちゃま」
盛り上がる二人に、誰かが声をかけた。
着物のメイド服を着ている女性だ。
茉莉に大人の年齢はわからないけれど、お母さんよりはもっともっと若い。
「あぁ、お菊さん」
「お、おじゃましています!」
茉莉はお菊さんに挨拶をする。
「この人が俺の世話係のお菊さんだよ。この子は茉莉。例の手芸クラブの子なんだけど、俺のせいで魂をちょっと切ってしまってさ色々見えるようになってしまったんだ」
「あ、あの苑野茉莉です、よろしくお願いします」
「そうだったのですね。私はお菊と申します。代々、闇土門家にお仕えしているメイドです。さぁお茶のご用意ができております。こちらへ……」
「あぁそうだね」
紡って本当にあやかしにんげん王子なんだなぁと、茉莉は思う。
そして店の奥にある扉を開けた。
すると天井も高く、幅も広い廊下に出た。
床にはゴージャスな絨毯が敷かれ、ところどころに立派な額縁の絵画や壺が飾られている。
なんだかずっと先まで続いているような……。
「……なんか広すぎない……?」
茉莉の家も狭くはないけど、こんなのなんかおかしい。
「うん、ここは人間の世界とあやかしの世界の狭間で時空が普通とは違うんだ」
「ほえええ!?」
もう驚かない、と思っても驚きの連続だ。
「今回は、僕の趣味で洋館にしたんだ」
「確かに、紡は洋風な感じだもんね」
「着物も儀式なんかの時には着るよ、和洋折衷好きさ。さぁどうぞ」
豪華な扉を開けた先も、豪華な洋風の部屋。
「わぁ素敵~」
宮殿の中のような部屋の真ん中には、素敵なアフタヌーンティーが用意されている。
「紅茶はお飲みになられますか?」
「はっはい、お飲みになられます!」
紡が椅子をひいてくれたので、慌てて座る。
「なに、緊張してるんだよ。ただのお茶だよ」
「だ、だってぇ」
「今日はマカロンとプリンをご用意致しました」
「わぁ綺麗~! 美味しそう!」
綺麗なピンクと水色のマカロンとクリームの乗ったプリン。
なにもかもが素敵だ! と茉莉は思う。
「さて……花子さんの事、どうするか相談しようか」
「うん……!」
そうだった!
トイレの花子さんの相談をするためにお邪魔したのだった。
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