第7話 びっくりの朝!お店が隣に!?


「おはよう~」


「おはよう! じゃあお母さんは行ってくるからね! お父さんももう行ったから」


「ふぁ~~い」


 両親は本当に忙しい。

 お父さんは部活を見守る顧問という仕事もしているので、帰りも遅いし週末もいない事が多いのだ。

 

「茉莉、今週末はどっか行こうね! じゃあ行ってきます!」


「やった~! いってらっしゃい!」


 どうやらお父さんも、今週末は珍しく休みのようだ。

 茉莉も嬉しくなる。

 お父さんはスポーツが大好きなので、どこへ連れてってくれるか楽しみだ。


 簡単なコーンフレークの朝ごはんを食べて、茉莉は歯を磨く。

 鏡を見て、ふと思う。

 そして自分の部屋で、可愛いアクセサリーボックスを開けた。

 ハンドメイド市で買った、可愛いリボンのピンが沢山だ。

 いつか髪を伸ばしたら、とゴムもある。


 ひとつ手にとって、鏡の前で合わせてみた。

 紺色のリボン。真珠のチャームが真ん中からぶら下がっていて上品可愛い。


「……これは大人っぽすぎるかな?」


 もうひとつ、同じだけどチェック柄のリボンのヘアピン。

 これならカジュアルな、今日のロンTとキュロットでも似合いそうだ。


「大好きなものを……身につけたい! 私も……!」


 パチリと前髪に、リボンのヘアピンを付けた。

 

 今日はソックスも、リボンが付いたものを選んだ。

 ドキドキするけど、心があったかくなる、素敵な気持ちだ。

 

 何か言われたら、紡みたいに言い返そう! そう思う。


 いつもの笑顔より120%にっこり!そう思って茉莉は家を出る。

 

「しっかり鍵をかけて……ん? ええええええええええええええ!?」


 なんと! 古い家がなくなったと思ったら、隣に新しい家ができている!?


「うっそでしょ!? なんでぇ!?」


 隣にできている家は、二階建ての、水色のおうち。

 一階は、ガラス張りのショーウインドウ。

 まるで洋服を売るお店みたいだ。

 でもショーウインドウには、カーテンが引かれている。

 右側には白い可愛い木製のドアがあって、小さな看板が掛けられているけど何も書かれていない。


「え? え? 空き地だったのに……なんで?」


 茉莉は夢を見ているのではないか? と思うくらいびっくりする。

 可愛いレースのカーテンは閉じているので中の様子は伺えない。


 玄関前には芝生が綺麗に植えられ、石畳が敷かれている。

 可愛い花の咲いた鉢植えもセンスよく置かれていて、うさぎの置物もある。

 

「……お店が一晩で、うちの隣に……?」


 むぎゅっとほっぺをつねる。


「いだっ!!」


 夢じゃなかった。

 何かが周りで起き始めている?

 不思議に思いながらも、学校の時間だ。

 茉莉は慌てて学校へ向かった。


「おはよーー!!」


「おはよー! 茉莉!」


 元気いっぱいの茉莉の挨拶にみんなが笑顔で振り返る。


「お、おはよっ!」


 みんな茉莉のリボンをチラっと見る。

 けど、何も言われない。

 良かった……とちょっとホッとする。


 紡の周りには、もう女の子達が集まっていた。

 今日は薄いピンクのブラウスに紺色のズボン。蝶ネクタイ。

 珍しいけど、かっこ可愛いのは間違いない。


「お、おはよう。闇土門君」


「紡でいいよ、茉莉ちゃん」


「ほえっ」


 きゃああっと女の子達が叫ぶ。

 

「じゃ、じゃあ私も茉莉でいいよ。みんなそう呼ぶし」


「オッケー。茉莉、そのリボン可愛いね。すごくよく似合ってる」


 にっこり微笑むと紡の結んだリボンも揺れた。

 今日は茉莉のリボンと同じ紺色の細いリボンで蝶々結びにしている。


「えっ」


 また周りの女の子達がきゃあきゃあと嬉しそうに叫んだ。


「んもーー! 紡君、かっこよすぎぃ!」


「女の子褒めちゃうなんて、まじ王子!」


「外国だと、普通なのかなーーー!!」


 確かに、こんな男の子は始めてだ。

 茉莉は顔が赤くなるのを感じる。

 なんて言えばいいの!?


「俺は自分に正直なだけだ。そのリボンは手作りなの?」


「あっ……うん。でも私が作ったんじゃなくて、ハンドメイド市で買ったやつ」


「ハンドメイド市……?」


 不思議そうな顔をする紡。

 

「うん。手作りの品をね、お店屋さんみたいにして売るの」


「そんなものがあるのか。面白いな、この国は!」


 紡は今日も凛々しく笑った。

 その笑顔で女の子達はキャッキャと、ハンドメイドの話なんかを始める。


 褒めてもらっちゃった……えへへと茉莉は一人で笑う。

 奈緒子ちゃんが、茉莉の近くに寄ってきた。

 

「茉莉~! リボン可愛いね~! 手芸とか好きだったんだぁ!」


「あ、うん。ちょっと可愛いものにハマっちゃってて……てへへ」


「なぁんだ! 興味ないのかと思ってたよー! じゃあ今後雑貨屋行こ!」


「えーほんとう!?」


 びっくりした。

 馬鹿にされたり、笑われる! って思っていたのに!

 

 紡のように自分に素直になったら、色んな新しい世界が広がるかもしれない!


 紡を見ると、朝の学活までに本を読みたいと言って一人で本を読みだした。

 それは手芸の本。

 可愛い手芸アクセサリーの作り方の本だった。


 茉莉は今日の手芸クラブで、紡とどんな話ができるかな? と考えてワクワクした。


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る