第6話 少しずつ広がる異変?


 一体なんの話だろうと思って茉莉は先生の元へ行く。


「あなた達二人、手芸クラブね」


「あっ……はい」


 そうだ!

 転校生が手芸クラブの二人目!

 つまりは紡が……!


「五年生になったら、手芸キットを購入するけど来月くらいから申し込みなのよ。だから明日は学校で手芸用具は用意するので、手ぶらで大丈夫という話です」


「俺は自分の道具を持っているので、それを使ってもいいですか?」


「もちろん! 楽しい手芸クラブになるといいですね」


「はい。きっと楽しいと思います。よろしくね」


 紡に微笑まれてドキッとしてしまう。

 可愛い格好をしてるのに、なんだか表情が自信たっぷりで凛々しい子だと茉莉は思う。

 

「よっよろしく……!!」


 まわりの女子は、みんな『手芸クラブ』の名前に驚いてる。


 紡がいるなら入れば良かった~という声も聞こえてくるが、なにより茉莉が手芸クラブという事も周りはざわざわしているのがわかる。

 でも紡のおかげなのか、笑う人はいなかった。


「あのっ……あの筆入れ、作ったの?」


「そうだよ。よくわかったね」


「すっごい上手!!」


「ありがとう。これから手芸クラブで色々作ろうね」


 紡がキリッと微笑んだので茉莉も笑ったけど、何かゾクゾクッと背中を寒いものが走った。

 鳥肌が立っている。

 紡は爽やかに笑っただけなのに、なんでだろう? と思った。


「……君は結構、勘がいいね」


 何か紡が言ったけど、よく聞こえなかった。

 

 ◇◇◇


 今日は学習塾に寄ってから家へ帰る。


「ん……? あれれ」


 茉莉の家の隣は空き家だった。

 それが更地になっている。


「あれ? 嘘、古い家があったよね」


 今朝もあったと思ったのだが、今は土だ。

 瓦礫もない。

 次に建てる人が古い家を解体したのかもしれないけど、茉莉が学校に行っている間に??


「なんかの勘違いかなぁ」

 

 不思議に思いながらも、茉莉は家へ入った。

 今日はお母さんが少し早く帰ってきていた。


「おかえり、茉莉」


 お母さんがいる! と茉莉はルンルンしてお母さんが台所で作っているものを覗いた。


「ただいまお母さん! やったぁ今日はハンバーグだぁ!」


「熱々ハンバーグ作るね」


「うん! ねぇお母さん、隣の家なくなってるよねぇ?」


「えっ? 隣……? ええっと……あれ? なかったじゃない? 隣は空き地……よねぇ」


「嘘だよー! 朝まで古い家があったじゃん!」


「え~! じゃあお父さんに聞いてみたら? 空き地よ。家を建てる時から」

 

 ちょっと怖くなる茉莉だったけど、お母さんは笑う。

 ゾワゾワっとしたけど、勘違い? と茉莉もとりあえず笑った。

 

 なんだか天井のすみっこから視線を感じた気がした。

 夕飯の支度を手伝いながら、茉莉は今日の事を話す。

 

「闇土門紡君って、かっこよくて可愛いものが好きな男の子が転校してきたんだ」


 見た目は強そうなイケメンなのに、着ている服はラブリー。

 好きなものは好き! って言えるのかっこいいなと思う。


「やみどもん……ねぇ」

 

 お母さんがハンバーグを焼きながら少し考えている。


「どうしたの?」


「ん? なんだか聞いた事があるなと思って……やみどもん……おじいちゃんだったかな~……」


「珍しい名字だよね、お友達とか?」


「ううん……なんだか怖い話だった気がする」


「えーやめてよぉ」


 まさかの答えにぎょっとする。


「あの世とこの世を行き来できる、あやかしと人間の血が合わさった一族……」


 お母さんがそんな話をするのは初めてで、茉莉は驚く。

 

「あやかし?? 妖怪ってこと?」


「そうなのかなぁ? おじいちゃんってお母さんのおじいちゃんだから、茉莉からはひいおじいちゃんね。会った事ないでしょ」


「うん」


「小さい頃に教えてもらったのよ、おじいちゃんは見えるって人でそういう仕事をしていたみたい」


「見える……? あやかしが?」


「みたいね~お母さんはそういうのないから。すっかり、そんな事忘れてわ~」


「じゃあ闇土門紡君はあやかしなの!?」


「いやだ、違うわよ! そんな事みんなに言っちゃだめよ? たまたまよ。変な事言ってごめんごめん」


「えーそっか……びっくりしたぁ」


 なにかの偶然かな? 

 

「でも手芸クラブできてよかったね! 楽しく闇土門君とクラブ活動頑張って!」


「うん!」


 明日はわっくわく!

 何かが起きそうな予感がした。


 そして隣の空き地が何やら夜中に騒がしい……???

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る