内村照輝

僕と照輝は、高校の天文部の仮入部で初めて出会った。初めて知り合った同士とは思えない程何事にも意気投合し、僕たちは同じ部活、同じ委員会に入った。高2で同じクラスになったことで、僕たちは更に親密になっていった。そんな僕たちを見ていたしおりは、本当バカがつくほど仲がいいのね。とからかう反面、友達が少ない僕が友人と明るく話しているのを見て、喜んでいるようにみえた。


高2の夏休み。僕は照輝の家に遊びに行った。しばらく2人でテレビゲームをした後、暑いからといって僕は1人でアイスを買いに行った。照輝も一緒に来たがったけど、おじゃまさせてもらってるんだからこれくらい1人で行ってくる、と言って僕は家を出た。そして照輝の家に戻ると、照輝が窓際で倒れていた。外傷が無かったから、一瞬寝ているだけかと思った。ちょっと揺り動かせば起きてくれるだろうと思った。なのに照輝は一向に目を開けてくれなかった。胸のあたりに右耳をつけてみる。おかしい、心臓の音がしない。僕は途端に冷や汗をかき、滑る床を転びそうになりながら走って、スマホを鷲掴むと一目散に救急車を呼んだ。それからはあまりにも早く色々な事が起こった。混乱していてあまり事の成り行きを覚えていないだけかもしれない。まず、救急車が来て照輝を病院に運んだ。僕も一緒に病院へ行き、病室の前で待った。医者から、照輝が心疾患で死んだことを伝えられたとき、何が起こったのか分からなかった。葬儀が行われ、学校では黙祷をした。照輝は一人暮らしをしていたため、遠く離れた実家から照輝の両親が来た。とても親切で優しい両親であり、僕が照輝が使っていた家に住みたいと言ったら、快く了承してくれた。彼らの目には、親愛なる友を亡くした、息子の友人とでも映っているのだろう。違うんです。照輝のお母さん。僕がもっと早く気づいていれば良かったんです。許してください照輝のお父さん。あの日僕が目を離して1人で出かけたりしたから。心の中で何度謝っただろうか。そして何度神様に願っただろうか。どうせ連れてゆくのなら僕も連れていって欲しかったと。照輝の家に居ても何も変わらないことは分かっているのに、この家から離れたくなかった。確かに友が生きていたという事実を手放したくなかった。

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