写真は語る
「先生ーー?居ますかー?」
今日は土曜日。いつもなら休日は訪ねないが、今日は防災訓練だかなんだかで土曜日にも学校があった。
(やっぱり休日はどこか出かけたりしてるよなぁ。居たとしても休日に訪ねるのは迷惑かな。)
追い払われたりしたら嫌だなと思いつつ、先生はそんなことしないとどこか確信めいた気持ちになる。
回れ右をしてすぐ帰ろうとしたその時、玄関の扉の前に誰かが立っていた気がした。先生かもと思い駆け寄るがそこには何もない。
(もしかして家の中で待っててくれてる感じかな?)
それはそれですぐに入らないと申し訳ないだろうという気持ちになる。黒くて重みのある扉はやはり鍵はかかっておらず、すんなりと中に招き入れてくれた。
「おじゃましまーす。先生ー母さんがまたスイカもらって欲しいってー。」
大声で言うも返事がない。さすがにスイカは飽きられたかと一昨日2人で巨大なスイカを爆食したのを思い出す。しかし、家のどこを探しても居ない。
(やっぱり今日は留守なのかな。だとしたら鍵開けて外出するとか先生不用心すぎ…。)
凪先生っちゃ凪先生っぽいけどな、と1人でクスクス笑いを
「猫ちゃーん?居るのかな?」
女性のような甲高い声で呼びかけるも、物音一つしない。猫とか犬は女性好きなんじゃないのか。あんなに可愛らしい見た目をしているが、もし前世はオタ活おじさんだったりしたら絶対に嫌だ。1人でそんな妄想をしながら2階を歩き回ると、先生の個人部屋のような部屋を見つけた。中は薄暗く、物置のようになっている。
(きれい好きそうな先生でも置きどころのない物はあるのか。………ん?)
一通り探索していると、積み上げられた分厚い本の上に長方形の紙があるのを見つけた。白紙に何かが書いてある。
―君の思い出と共にゆく 内村 照輝―
(内村って…)
どこかで見た名前だと思いつつ裏返しにすると、仲良く肩を組む青年2人が写っている。どうやら写真だったようだ。
(あ、これ凪先生だ。メガネしてないから一瞬分からなかった……隣りに写ってる人どこかで見たような…)
どこかから落ちたのだろう。そう思いふと時計をみるともう5時近くになっていた。急いで先生の部屋を出る。階段を駆け下りる際に転びそうになり肝が冷える。誰も居ないが、おじゃましましたー!と一応叫んでから玄関を出る。そこで何かをふと思い出し、体がピタッと一時停止する。
(そうだ、表札。)
伸び切った植物のツタで隠れていたが、先生の家の表札には「内村」とあった。
(内村…!やっぱり写真に書いてあった名前だ。)
どこかで見た名前だと思っていたが、まさかこんなところで目にしていたとは。写真の人が内村という人だとすると、もしかしたら先生の友人なのかもしれない。でも先生が内村という表札の家に住んでいるのは何故だろう。内村という人はどこに?あのメッセージは一体…俺は夕日を見つめながら、先生の心の深淵を見つめずにはいられなかった。
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