第21話

 夏凪がいなくなってから一週間。気まぐれに[会いたい]と送ったメッセージに既読がつくことは当然無かった。俺はずっとカーテンを閉めた薄暗い部屋に籠もっている。ベッドに寝転んで天井を眺めると、白い天井に夏凪が浮かんで、俺はまた涙を流す。いくら泣いても、涙が乾くことは絶対に無かった。

「蓮斗、いつまで寝てんの」

 ねーちゃんがノックせずにドアを開ける。

「ねーちゃんは、悲しくないの」

「悲しくないわけないじゃん。だけど、立ち上がらなきゃ、夏凪に怒られる気がして」

「だったら俺は怒られたいよ」

 俺はまた天井に視線を戻す。

「もう、情けない。夏凪からの手紙、受け取ってるから、読みたくなったら言って」

 ねーちゃんはそう言い残してドアを閉める。俺はがばっと体を起こしてドアを開ける。

「手紙、読みたい」

 ねーちゃんは自分の部屋から、封筒とパソコンと『人生ノート』を持ってきた。全部夏凪が死ぬ前にねーちゃんに預けていたらしい。俺はカーテンを開き、早速封筒を手に取った。便箋にはびっしりと字が書いてあったが、どれもねーちゃんの字だった。きっと、もう書くことも難しかったのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る