第19話

「もう蓮斗をここに連れてこないで欲しい」

 桃花は目を丸くして「どうして…」と小さく呟いた。

「昨日のお泊り会、すごく楽しかったの。最高に幸せだった。だから、私が最後に見た蓮斗が、蓮斗が最後に見た私が、昨日の蓮斗と私でありたいの」

 桃花の丸い目にまた涙が溜まる。

「蓮斗に寝たきりの状態を見られたくない。泣いてる蓮斗を見たくない。蓮斗の中にいる私には、ずっと笑っていて欲しい」

 喋りっぱなしだから息が苦しくなって、一度深呼吸をする。

「これで最後のお願いだから、ごめんね、桃花」

 桃花は顔を押さえてしゃがみ込んだ。手を伸ばして、細かく上下する桃花の背中をさする。しばらく泣くと、桃花は立ち上がって「うん、わかった」とだけ言った。

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