第14話

 二十歳と一ヶ月。今日は蓮斗と付き合って四年の記念日。私の受験や蓮斗の留学で一年半ぐらい会っていない期間があるにしても、こんなに長く続いているんだなと思うと感慨深い。

「こんばんわー! 夏凪!」

 今日はやりたいことがあるらしく、日が暮れてから来てくれた。私は少し体を起こすと「元気だね」なんて笑って返した。

「夏凪は調子悪そうだね」

「う〜んちょっとね」

 もう四年を共にすれば、顔色が悪いことなんてすぐにバレてしまって、蓮斗は子犬のように下から私の顔を覗き込む。

「大丈夫、今日はそんなはしゃがないよ」

「何をするの?」

「じゃじゃーん」と言う蓮斗の手には、たくさんの手持ち花火があった。夜に会いに来た、ということにも納得がいく。

「花火なんて久しぶりかも」

「だよね、俺も。早速やりにいこう!」

 椅子から立ち上がる蓮斗とベッドから動けない私。二人の間にちょっとばかりの沈黙が漂う。

「あ、ごめん、足、思うように動かせなくて」

「あ…そうだよね。ごめん、車椅子取ってくるわ」

 駆け足で病室を出る彼の背中を見て、また自分の情けなさを感じる。

「持ってきたよ。乗る時も俺が支えたほうがいい?」

「自分で出来るはず…」

 ゆっくりとベッドから起き上がる。そしてゆっくりと布団から足を出す。長期の寝たきりで筋肉が落ちた足は、まるで老婆のように白く細い。かろうじて皮膚のツヤは健在だった。ベッドから足を下ろして、車椅子へ向かって腰を浮かす。その瞬間に、激しく目眩がして私は車椅子の前に倒れ込んでしまった。

「やっぱ俺が、」

「支えないで! 自分で出来るから」

 優しく差し伸べてくれた蓮斗の手を私は振り払った。きっと私はすごい怖い顔をしていると思う。

「あ、ごめん」

 蓮斗は手を引いて代わりに車椅子を押さえる。私がやっとのことで腰を持ち上げて座ると、蓮斗は私の前にしゃがみ込み「ナイスファイト」と拳を突き出す。優しく笑いかける彼に、私もそっとグータッチをする。

「よし、じゃあ、行こっか」

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