ねことR180

沼津平成

第1話

 ねこは九回生きる、というが、庵野あんの家に起きたことは、さすがの俺でも驚愕だった。

「僕の、ひいひい祖父が」

 俺が立ち会ったのは兄の友人だった。38歳で、企業をして、上場? へっ、今のうちに淡い夢でも見てろや。俺はそう思っていた。

「僕の、ひいひい祖父の時代に、猫を引き取ってきた」

 兄の友人、庵野智之あんのとしゆきから俺がもらってきた話はこうだ。


 庵野のひいひいじいちゃん、柿太郎が猫を引き取ってきた。今で言うスコティッシュフォールドとかいう種で、オレンジと茶色が混ざり合ったような色をしている、ふわふわな猫だ。

「にゃー、にゃー♪」

 毛並みを撫でられると、猫は決まってこういった。そのとき柿太郎のいえは沼津にあったから、暇さえあればよく海に出た。

「さあ猫! アジをとってこい」

 しかし猫は水が苦手である。しかも不安なことに、潮が満ちたタイミングで猫を歩かせたために、猫のあしがずぶ濡れになってしまった。

 猫はぶるぶると水気を振りはらうと、知らん顔の柿太郎のところにいって、

「なんてことするのニャー、ひどいにゃー!」

 と叫ぶそうだ。(もっとも、にゃーにゃーにゃーとしかいってはいないが)

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ねことR180 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel

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