ぬーさん

ぬーさん

　これは私が小学生の頃のお話です。

　ぬーさんというのはあだ名です。名前はあきこちゃんという、同級生の女子です。あだ名の由来は、いつもぬぼーっとしているから。

　前回のエッセイで、あだ名について書きました。それで、彼女の事も思い出したのです。

　私の小学校の校長先生は、毎朝、校門に立ち、子供たちにおはようと笑顔で挨拶してくれました。雨の日も風の日も毎日。私も毎朝、校長先生におはようと声をかけて貰って、嬉しかったです。

　ある日のことです。校長先生が、いつものようにおはようと言ってくれて、私もおはようございますと挨拶を返しました。そして、私の後ろの子に、校長先生がおはようと声をかけて、あれ？　ランドセルはどうしたの？　と聞いています。振り返ると、そこにはぬーさんがいて、あっ、忘れた、とぬぼーっとして言いました。そして、くるりと向きを変えて、ランドセルを取りに帰ったのです。あ～、ぬーさん、今日も朝から、ぬぼーっとしてる。

　ぬーさんって呼んでいたけど、彼女はこのあだ名、どう思っていたのだろうか？　ふと考えてみたのですが、きっと、気にしていなかったかも。なんて、都合よく思っています。