第7話 スレ民と百人隊長

本編の前にスレ民各人の詳細をほんの少しだけ明かすプチ番外編


少し遡る。

令和15年8月20日(土)午後23時30分頃

2033.8.20 23:30


細川健治は今日一日、買い物、洗濯、掃除、会社に持っていくお弁当の惣菜の準備をしていた。先ほど作り終えた、いくつかの惣菜と白米を冷凍した。

彼はワンルームマンションに住んでいた。6月29日に55歳になって、時代遅れの結婚紹介所、マッチングアプリなど常に使用及び紹介を受けていたが、運命の赤いで結ばれた女性とは巡り合わなかった。

身長が低く、禿げた頭で薄幸な顔、地元の中小企業の係長だった。

大学の同期は皆、独立して、会社を起こしたり、一流企業の部長や役員クラスは多かった。会社の同期でも、最低でも部長になった者がいた。

彼は別に焦っていなかった、劣等感を感じていたわけでもなかった。

細川健治は天涯孤独だったが、親が残した様々な土地などで懐がすごく潤っていた。

実際、今住んでいる10階立てのマンション全体が自分の所有物だったし、このマンションを含むアパート10軒、マンション7軒、駐車場15軒、商業施設2軒などの家賃収入でも一生遊んで暮らせる蓄えが持っていた。

それでも彼は堅実、そしてケチと言える生活をしていた。

働く必要がまったくなかったものの、親の伝手で入った地元企業に23年勤めていた。役員の人たちが彼は資産家であることを知っていたものの、管理職以下の一般社員は彼の正体はまったく知らなかった。

彼は私生活ではドケチな倹約家だったが、好きなゲームの課金となれば太っ腹を凌駕するお金使いの荒いゲーマーだった。

細川健治は『幻想世界アシャティ』でホネカワ太というHNでゲームしていた。VRMMO史上最悪のクソゲーの評判だったものの、彼には素晴らしい狩場だった。あまりにもPKをするもので悪人のホネカワ太というあだ名が付いた。


「明日も休みだし、最近面白いゲームもないので掲示板でも覗いてみるか。」


一人でつぶやき、ゲーム用に買ったデスクトップパソコンの電源を入れた。

彼は特定のゲームにめり込んだのは寂しかったからだった。でも細川健治がそれを絶対に認めたくなった。


座ってから数時間が経ったし、様々なゲームスレッドでコメントを書いていたが、そろそろ寝ようかなと思った時に大好きだったゲームのスレッドが目に入った。


2033.8.21 03:28

『幻想世界アシャティ』伝説のクソVRMMOを語ろうぜ その305


彼は思わず、書き込みをした。


11.ぷれいや~名無しさん投稿日:2033年08月21日 03:39▼返信

>>7

ほぼ裸の無課金スケルトンだったw


他のスレ民がコメント書いているところを見ていたら、大型画面が光った。

細川健治は目をつぶり、頭から軽く引っ張られる感覚を覚えた。

目が開けたら、自分を含む、数人の如何にもゲームキャラクターの人たちと小川が流れる曇り空の平野に転移していることに気づいた。

『幻想世界アシャティ』でプレイした時の本当のキャラクターをカムフラージュするために作った仮のアバターであった重課金スケルトン騎士の姿のままだった。



どこかの世界

日時不明


ジェラール・グエイドー百人隊長は2本の大太刀で辛うじてゆいなの連続攻撃を受け止めていた。


「どうしたの、ジェラール君?防戦一方じゃん、攻撃しないの?」


あの美しい金髪エルフの女性戦士が煽っていた。


「貴殿が強い、恐ろしく強い。」


「知っているよ。ほらほら、攻撃しないと負けるわよ。」


ゆいなが繰り出す攻撃が素早くて、重い。華奢な体で巨大な斬馬刀で襲い掛かり、

多彩な技を披露していた。


「貴殿は何故、その巨大な剣を軽く回せるのか?」


「知りたい?」


「ぜひ教えていただきたい。」


「あたしはこう見えても、すべての戦闘レベルにおいて、頂点を極めているよ、ジェラール君。」


言い終えた後、先ほどの狂気が消えた、無邪気な笑顔のまま、片手で斬馬刀を持った。


「貴殿は強い、そして美しい。」


「やだよ、ジェラール君、あたしを口説いているの?」


ジェラールはそのつもりはなかった。ただ単に感服していた。


「貴殿は殺し合いの中で知り合ったのは無念である。貴殿とは別の場所では出会いたかったと思うぞ。」


「殺し合い?あたしはジェラール君を殺すつもりはないよ。」


ゆいなの剣裁きは素晴らしく、ジェラールの右手の籠手を素早く叩き、1本の大太刀を落とさせた。


「後1本落としたら、あたしの勝ちだよ。」


ジェラールは残った1本の大太刀を両手で握った。


「貴殿に負けるつもりありません。」


ゆいな、右手で斬馬刀を頭の上に持ち上げて、時計回りに回し始めた。


「そろそろ決着しましょう、ジェラール君。」


「貴殿と戦って良かったと思うぞ。」


「貴殿、貴殿って。。ゆいなと呼んで、ジェラール君。」


「ゆいな殿。」


「固いな、ゆいなでいいよ。ゆいな。」


ゆいなは何故か赤面をしながら言った。


「ゆいな様。」


「ジェラール君。。もう。。呼び捨てでいいよ。」


「ゆいな。。。」


ジェラールも自分が赤面していることに気づいた。


「ありがとう、ジェラール君。」


ゆいなは素早く、回していた斬馬刀を振り下ろし、ジェラールが握っていた大太刀を一瞬で折った。


「あたしの勝利だよ。」


「ゆいな、では、我の命をもらうのはよかろう。」


ケンタウロスであるジェラールは前足を折り、跪き、頭を下げて、首を差し出した。


「何をしているの?頭を上げてよ、ジェラール君。」


ジェラールは頭を上げた。その時、ゆいなが斬馬刀をアイテム空間に戻し、しゃがみ、そしてケンタウロスの首に両手をまわし、唇を奪った。


ジェラール・グエイドー百人隊長は驚いて、目を見開いた。


「何故、負けた我の命を奪わん?」


「ジェラール君のことを気に入ったよ。」


果敢な戦士であったケンタウロスが緊張していた。


「では、我はどうなるのか?」


「生殺与奪 はあたしが持っているのよ。ジェラール君をいただくよ。」


「いただくと言われたが、我を食するのか?」


「もう鈍いよね。でもそこも気に入っているの。ジェラール君をある意味で食べるけど。」


「ある意味?」


「ジェラール君、あたしの初めての奪ってね。」


「ええ?」


ジェラール・グエイドー百人隊長は人生で初めて、恐怖、嬉しさ、興奮でパニックになった。



その近く。


仁義なき竜ノ助は能力を開放し、如何なる物理的攻撃を無効化していた。

彼の繰り出すパンチの破壊力はすさまじく、襲い掛かってきたケンタウロス団員の頭や胸に拳で大穴を開けていた。


「そこまで異世界の竜人よ。」


大柄の黒い髪の女性のケンタウロス戦士が竜ノ助の前に立った。


「止めてみろよ。」


竜ノ助は目に見えない素早いパンチを放った。

女性のケンタウロス戦士は左手でパンチを止めた。


「このレベルで私に傷も付けられない、竜人よ。」


「強そうだな、お前はなにもん?俺は竜ノ助、仁義なき竜ノ助だ。」


「わたしはケンタウロス騎士団、マリ・コリーナル・マシァードル百人隊長。」


「なるほど、マリー・コリ。。いや、マリっ子ちゃんって俺と同じ打撃系のファイターかな?」


「打撃系戦士だ。わたしと勝負しろ、竜人よ。」


「俺は強い者が好きだぜ、女だから容赦しねよ。覚悟しろ、マリっ子ちゃんよ。」


「既に覚悟しているよ、竜人よ。わたしと拳を交えたことを後悔するがいい。」


「その気構えが好きだぜ、マリっ子ちゃん。」


打撃ファイター同士が目に留まらぬ速さで殴り合いを始めた。



次回:打撃のスレ民

日本語未修正





























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