【意地悪なお姉ちゃんと】



(コンコン、というノックの音)


「どうぞー」(昨日と変わらない、ドア越しの声)


(がちゃり、とノブを回す)

(昨日と同じく、登下校の喧騒が窓越しに微かに聞こえる)


「来てくれたんだね」(嬉しそうな様子で)

「ふふっ……。嬉しいなあ」(先ほどよりも、更に嬉しそうに)

「ほら、おーいでっ」(上機嫌に)


(足音)

(主人公、声に近付いていく)


「ほら、お姉ちゃんがぎゅーしちゃうぞー!」(すぐ傍に聞こえる声)


(どさり、と柔らかそうなベッドに二人が寝転がる)


「君は今日も可愛いねー。ふふっ」(頭の少し上から)

「ね、また頭撫でてあげよっか?」

「ふふっ、やだって言っても、撫でちゃうもんねー」(笑いながら)

「……よしよし。よしよーし……」(言い聞かすような、小さな声音で)


(一拍置いて、)


「今日は学校、どうだった? 楽しかった?」


(数秒待って、)

(主人公の発言パート)


「……うん、うん……。そっか」

「え? 私?」(素っ頓狂な声で)

「うーん……。分かる? 様子、変だった? そっか……」

「実を言うとね、ちょっと、変わったことがあったんだ」(静かな声音で)

「知り合いの先輩にね、告白……されちゃって……」


(一瞬待つ)

(主人公の発言パート)


「え!? ううん、断ったよ!?」(声が裏返るくらいに焦った様子)

「でも、『返事は今度で良い』って言われちゃって……」

「もちろん、相手の人も凄く考えてくれたんだと思うし……」

「クラスメイトとかは、『カッコいいし、付き合っちゃいなよ』なんて言うんだけどね……」

「……でも私、その人のこと、何も知らないし……」

「それに……」(少し溜めて、思わせぶりな風に)


(数秒の沈黙)


「あ、えっ!? ひょっとして……嫉妬してる?」

「かわいーんだっ!!」(声が大きくなり、一気に近付く)

「そっかー。私が告白されたと知って、嫉妬しちゃったんだねー。自分だけのお姉ちゃんじゃなくなると思ったんだー。そっかー……!」(にやにやと、極めて上機嫌に)

「大丈夫だよ。彼氏とか、恋人とか、そんなの、要らないから」(小さな声で)

「……君がこうしていてくれるだけで、私は満足だから……」(耳元で囁く)


(一拍置き、)


「……あ。びくっ、ってしたね」(耳元で)

「こうやって傍でお話されると、ドキドキする?」(更に小さな声量で、更に近くで)

「可愛いなあ、君は……」(そのまま耳元で)

「じゃあ、今日はこのまま、寝ちゃおっか……?」(囁く)

「おやすみ……」(更に小さな声で)

「ふふ、嫉妬したからって、えっちなことしちゃダメだよ……」(微笑み混じりで)

「だめなんだからね……」(段々とゆっくりに、眠たそうに)


(一拍置いて、)

(「すー、すー」という規則正しい寝息が聞こえる)


(十秒ほど待って、次のトラック)

(スマートフォンのアラームが聞こえる)


「……ん、おはよ……」


(ごそごそ、というスマートフォンを探す音)

(アラームが止まる)


「んー……! 今日も、よく寝た!」(伸びをするような声で)

「君はどうだった?」


(数秒待つ)

(主人公の発言パート)


「……え? 耳元で色々言われて、ドキドキして、眠れなかった……?」

「かわいーんだっ! ぎゅっ、ってしたくなっちゃう!」(ぎゅう、と抱き締める)

「恥ずかしいの? 可愛いねえ……。君は本当に可愛い」(猫撫で声)

「恥ずかしいなら、やめちゃう?」(悪戯っぽく)

「……うん、そうだよね。私も同じ気持ち」(安心したように)

「また一緒にお昼寝しようね」


(一拍置いて、)

(主人公が立ち上がり、少し声が離れる)


「あ、もう帰る時間だね」


(一瞬間、間を空ける)

(主人公の発言パート)


「……そうだね。もうご飯の時間だね」(残念そうに)

「じゃあね、気を付けてね」

「じゃ、またね」


(一瞬の間)

(主人公の発言パート)


「うん……。うん、じゃあね」


(足音)

(ノブを回す音、扉が閉まる)



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