あとがき解説

 ※あとがきはいつも近況ノートに書いていたのですが、今回は時系列やらがややこしいので、こちらにて。


 日本の神様、特に縁切り系の神様って、力技で押し通してくる時があると思う。

 これは作者の知人の話。知人は職場で酷いパワハラを受けており、悩んだ末に縁切りで有名な神社へお参りに行ったところ、パワハラしてきた相手方が怪我をして仕事を続けられなくなって地元に帰られることになり、物理距離的に縁切りすることになった……とかなんとか。「いや、そこまで頼んではいなかったんですけれど……」という神様ガチ怖エピソードを聞いたことがあります。

 今作に出てきた『ソレ』、もとい蛇神様は、そんな感じの力技で押し切って解決する系の神様になります。いやまぁ、今作は「っていう夢を見たシリーズ」なので、夢に出てきた神様なのですが。


 改めまして、「っていう夢を見たシリーズ」とは。

 その名の通り、夜寝てる時に見る方の夢で、「なんかすごい夢見たんだけどー?!」となった夢を元ネタとして書いているシリーズになります。

 今作、喰いたがりの神様は、飛び起きた際に「めちゃくちゃホラーでとんでも鬱展開の夢見たんやけど……」と呆然となりながらケータイのメモ機能に残しておいた夢ネタです。ちなみに、この夢を見たのは今からざっと数十年前になりまして、当時はスマホではなく折りたたみ式のガラケーでございました。はい、見た目お姉ちゃんのあの方、本来はガラケーを丸呑みしておりました。インパクトはあるからメモに残したのはいいものの、どう足掻いてもバッドエンドにしかならないので執筆モチベーションがどうにも長続きしないせず、長らく放置していたネタなのでした。


 以下、キャラと用語解説。



【人食い鬼】

 その昔、村で大暴れしていた人を喰う鬼。今作の元凶。

 倉守家の先祖によって封印されたのですが、近年の土地開発やらで封印場所である山の地盤が緩み、土砂崩れによって封印の要石が流されてしまい、この度、堂々の復活を果たしていました。

 この鬼、質が悪いところが、喰った人に化けて縁者を次々に食い散らかすこと。更には暗示をかける術にも特化しており、弥生には「姉が死んでいるという事実を忘れる」「鬼以外の存在に恐怖を持つようになる」という二つの暗示がかけられていました。弥生がひたすら蛇神から逃げだそうとしていたのはこの暗示のせい。

 冒頭の悪夢は、鬼が作る領域的な空間に引きずり込まれた弥生が見た風景。血の海に転がっているのは鬼が食い散らかした人たちの残骸です。この悪夢に出て来るのがお姉ちゃんと白蛇で、一見すると白蛇がこの惨状を作ったように見えるけど、白蛇は丸呑みして残骸を作らないので、実はお姉ちゃん(に化けている鬼)の方が黒幕……というミスリードを狙っていたのだけれど、上手くミスリードできてたかしら?


【倉守家】

 先祖は元々、流れの修行僧。立ち寄った村で鬼退治を依頼され、封印はできたけれどまた復活する可能性を懸念し、この土地に定住した由緒正しき家系。だもんで、親族の伝手を使って弥生を都会の寮着き高校へほいほいと送り出すことができた。なかなかのお金持ちな家だったりします。

 とはいえ、ここ近年は没落気味。それというのも、鬼の封印を管理できるほどの霊力と素質を持った後継者がなかなか生まれてこなかった為。お姉ちゃんこと千佳の先代、祖母が一人で頑張っていたのですが、千佳を後継者として育て始めた最中に急逝してしまいました。そうして、どうしたものかと悩んでいる矢先に、山の土砂崩れが……。

 ちなみに、弥生は家の事情などは詳しく知らされていませんでした。弥生本人は霊力が少なくて後継者としては弱かった為、それならば家業に縛られずに自分で選んだ道に進んで欲しいという両親と姉の願いからの判断でした。しかし、この判断が、果たして正しかったのやら?


【蛇神】

 元々は、倉守の先祖が作った式神でした。鬼の封印が破れた際の保険として創り出され、倉守一族に丁寧に奉られた結果、神格化して一族と周辺地域の守り神になっていました。

 けれど世話してくれる者が年々減り続け、仕舞いには忘れ去られて放置される始末。だいぶ力が弱まっていた中で、千佳からのお願い事。そして、千佳というお気に入りの娘が鬼に喰われた挙げ句に姿を取られてしまっている、と。

 つまり蛇神としては、おいコラ人食い鬼なにしてくれとんじゃワレェ、という思考回路だったわけです。

 とはいえ、今の自分は力を失った守り神。全盛期であれば鬼を丸呑みして再封印も可能だったかもしれないけれど、今はそこまでの力はない。ならば、鬼にとって毒である自分自身を喰わせて、内側から自分もろとも鬼を消滅させてやろう。

 そうして緻密に計画を立てて実行した結果が、今作本編、なのでした。

 鬼は喰った人の縁を辿って次の獲物を見つけ出すので、こっそり鬼を尾行し、隙を突いてまずは千佳の姿を奪取。更に弥生を連れ出しつつ弥生に連なる縁を一時的に自分に移し(スマホ一気呑み)、鬼のターゲットが自分へ向くようにと仕掛け、且つ、弥生に成り代わることで鬼を騙しきった……


 ……うーん、バッドエンド……いや、蛇神からすればメリバ? 少なくとも残された弥生からすればアンハッピーエンドな結末になりました。

 この後の弥生を描くべきか悩んだのですが、何をどう付け足しても蛇足にしかならなさそうだったので、あえてラストも曖昧な感じで終わらせています。彼女の今後は読者の皆様のご想像にお任せします。


 さて、最期まで「喰いたがりの神様」をお読み頂きありがとうございました。これホラーになってる? と不安になりながら執筆していましたが、どうだったでしょうか……ホラー? これホラーになってる……?


 それでは、これにて。次回作もよろしくどうぞ。

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喰いたがりの神様 光闇 游 @kouyami_50

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