第4話 運命の人①

「おはようございます」


 店に着いたのはシフトの10分前だった。タイムカードを切り、控室のロッカーにカバンをしまって、名札と腰につけるバックを身に着ける。すでに同じシフトとなっていた店長とアルバイトの佐々木は、すでに仕事の準備を整え、椅子に腰かけ雑談をしていた。


 恵琉が挨拶すると、二人は視線を恵琉に向けて同じように挨拶を返す。


「あれ、富田さん、なんだか顔色が悪いけど、大丈夫?」

「本当だ。今日は土曜日で人が多いけど、無理はしないでね」


「ええと、大丈夫ですよ。ただちょっと昨日は夜更かししてしまっただけです」


 いきなり顔色が悪いと言われて恵琉は自分の頬を触ってみるが、熱っぽくはない。しかし、言われてみると、胃がむかむかして気持ち悪いかもしれない。


 店長が席を立ち、恵琉の顔を心配そうにのぞき込んでくる。


「店長、女性には体調が悪い時もありますよ。本人も大丈夫と言っていますし、仕事に行きましょう」


 腕時計に目を向けると、始業時間に迫っていた。店長が先に控え室を出ていき、続いて佐々木も出ていく。ちらりと振り返った彼女は心配そうな顔をしていたが、恵琉に特に言葉をかけることはなかった。恵琉も慌ててその後を追った。


「いらっしゃいませ」


 恵琉の店は土日、祝日は開店時間が平日より一時間ほど早まる。開店時刻の10時に店のシャッターをあげると、すでに数人の客が外で待機していた。チラシの安売りを見て買いに来たのだろう。


客が店内に入ってくると、一瞬で仕事モードに切り替わる。今朝の占いのことも、夫の幸が外泊したことも頭の隅に置いて、恵琉は仕事に没頭することにした。


「すいません。この服のLサイズはありますか?自分で探したんですが、見つからなくて」


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