第18話
自分は取るにたらない存在ですから! キリッと発言してたクラリスではあったが、結果的に賢者の娘の友人ポジションという噂を確固たるものにする行動となった。
「流石はクラリスさんですね。本当にエリ様とお茶会を開くだなんて」
「いや、少し予想外ではあるんだけど……めんどくさがり屋のあの人が来るとは思わなかったし」
「それにあたしらが、揃うなんて運命を感じるよね!」
厳正? な抽選で選ばれたのは、数少ないクラリスの友人でもある、ジェシーとルナだった。
「運命っていうか、学長の私への配慮の気もするけど。まぁいいや、二人ともよく聞いて、エリ様は少し変わってるから実際に会うとお嬢様って感じではないの。質問会であった紹介を五倍くらい濃くした人だと思ってね」
「わかりました? ええ、変わり者と接するのは慣れておりますから」
「今、あたしのこと見た? お前だって大概だろ、ジェシー! ゲテモノ好きのくせに!」
「ルナさん、貴方は可愛いを理解してないんです」
「理解してるよ! 女の子は皆んな可愛い!」
(この二人なら存外、上手くやってくれるかも。変わりも同士)
会場に設定されたのは、学校近くにあるカフェ。
場所を秘密にしたところで、目立つ存在ではあるので学生達には近寄らないように通達が出された。
また道中には衛兵も多く配置する案も、グレイ家側に提案したが見事に却下された。
貸切にされたカフェの中庭で三名の少女は談笑しながら、待機する。
三十分もしないうちに、カフェ内に入店を知らせる鈴が鳴り響き、まずはクラリスのみで来客の出向かいに赴くが、入り口でメイドの女性と女の子が押し問答をしている。
「お嬢様、室内にはライアンは連れて行かない約束デス」
「……ライアンもお茶会に参加する」
不細工なロバの上に乗ったまま、抱きつき離れる様子がなく、それを引き剥がそうと説得するメイド。
「エリ様、店内に動物はダメです」
「……ライアンは家族」
「そういう考え方もありますが、ああもう! お店の方に許可をもらってきますから!」
クラリスがパタパタと走って、お店の人に許可をもらう。今回は特別にとライアンの入室が許可された。
リリーはお茶に変な物が入ってはと、許可をもらい調理場に行ってしまったので、クラリスはエリと共にロバを伴って中庭に行くと、二人の女の子達が出迎えをしてくれる。
黒髪の少女は目を丸くして、ロバの存在に驚き、もう一人の藍色の髪の少女は目を輝かせてライアンを見つめている。
「えっと、先に紹介からしますね。クラスメイトのジェシーとルナです」
「ジェシーです! 可愛いですね、抱きしめてもいいですか? あと、特技は肉を焼くことです!」
グイグイ来る、ジェシーにクラリスという名の盾を展開し、エリは後ろに隠れる。
「初めまして、ルナです。特技と言いますか、趣味は栞作りです。とても愛らしいご家族のロバさんですね」
ジェシーの時とは違い、エリは少し前に出てそうだろうとドヤ顔を展開する。
その隙をついて、抱きつこうといやらしい手つきをしていた、ジェシーをクラリスが威嚇する。
「あら、随分と打ち解けていますね。仲良しなのは良いことデス。グレイ家のメイドのリリーです。よろしく」
リリーが持ってきてくれたお茶を、エリ以外が並べるのを手伝い、改めて席に着く。
「少しゴタゴタしたけど。お茶会を開始しましょう。エリ様も自己紹介をいただけますか?」
「……エリ」
「エリ様は特技とかあるの? 私はマッサージも得意だから今度揉みしだいてあげる!」
「……特技。子作りの手伝い?」
エリの発言に対して、リリー以外が全員固まってしまう。
「お嬢様のおかげで子供が出来ました」
「手伝いってアドバイス的な、知識的なものなんですよね?」
「……そんな感じ」
「エリ様は言葉のチョイスが独特なのよ。少し言葉も足りないし、あんまり深く考えないでね」
「わかりました。私はその可愛らしいロバさんのことが気になります」
可愛らしいという発言には、ドヤ顔のエリ以外が苦笑いをする。
「……ライアン。頭も良い」
「触ってもよろしいですか?」
エリが首を縦に振ったのを確認した後に、目線を合わせて手を伸ばし、ゆっくりと体に触れる。
動物に対して実に慣れて手つきで、ライアンの体を優しく撫でる。気持ちがよかったのか、ルナの太ももに頭を乗せてもっと撫でろと、とろけ顔をするが一般的な人から見れば中々に破壊力のあるアホ顔である。
ライアンの気持ち良そうな顔を見せて、エリが闘争心を燃やして撫でてみるが、とろけた顔から不満な顔に変わってしまい、大きなショックを受ける。
「もっと優しく撫でるといいかもしれません。あとはブラシとかもよいと思います。後でクラリスさんにおすすめを伝えておきますね」
「……わかった」
「なんで私?」
和やかにお茶会は進み、基本的にはあまり多くを話さないエリではあったが、クラリスの司会進行もあり適度に話をフラれて、なんとなくではあるが雰囲気に馴染むことができた。
「……私とクラリスは友達?」
「突然、どうしたんですか。そうですね、どうなんでしょうか。利害関係が一致している、知り合いって感じはしますけど」
「……あー、それな」
「お二人共、八歳の子供がする会話ではないと思いますけど、賢すぎるのも考えようですね」
「普通に楽しく話せてるなら、もう友達でよくない? 私は難しいことはわからないけどさ。だから私とエリ様も友達でいいよね? 抱きしめていい?」
エリの死んだ魚のような目が、更に深く、目の光が失われていく。
「ジェシーさんは女の子なら誰でも友達って言うのですから、気にしないでください。利害関係だけってこともないんじゃないですか? 例えばエリ様はクラリス様の好きなとこありますか?」
「……アップルパイ」
「お料理が上手なとこなんですね。クラリスさんはどうですか?」
「尊敬できる人だと思う」
「ほら、二人共、お互いに好きなとこがあって、一緒にいて嫌じゃななら友人でいいんじゃないでしょうか。頭の良いお二人のことですから、理由をこじつけないと友人って思えないところもあると思いますけど、私は似た物同士の良い友人同士だと思います」
「ちょっとエリ様と似てるって言われると、ショックかも」
「……マジギレ案件」
「喧嘩するほど仲が良いとも言いますから」
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