第9話 友情が駆ける青空の下で

体育祭当日、晴れ渡る青空の下、学校のグラウンドには活気あふれる生徒たちの声が響き渡っていた。旗がはためき、観客席からの応援が飛び交う中、勇斗たちのクラスも次々と競技に挑んでいく。


勇斗はリレーのほかに個人競技で100メートル走に出場していた。スタートラインに立ちながら、彼の心臓は高鳴り、練習の成果を発揮する瞬間がついに訪れたのだ。


スタートの合図とともに、勇斗は一気にダッシュした。風を切る音が耳に届き、視界にはまっすぐ伸びるトラックだけが映る。全力で駆け抜けるその瞬間、練習の日々がフラッシュバックし、彼の中に強い決意が芽生えた。


観客席には、花音と美月の姿が見える。特に美月は、手を振りながら「がんばって、勇斗!」と大きな声を上げていた。その声が彼をさらに鼓舞し、ゴールラインへと向かう足を速める。


結果は惜しくも2位だったが、勇斗は満足感に満ちた笑顔を浮かべてゴールに到達した。クラスメートたちからの拍手と応援に包まれながら、達成感に浸りながら息を整えた。


「おつかれさま!かっこよかったよ!」


「あとちょっとで一位だったんだけど。」


「確かに惜しかったけど、全力で走る姿がすごくかっこよかったよ。」


まっすぐな瞳でそう言った美月の言葉に、勇斗は照れながら感謝の意を示した。


次に行われたのは、和真が挑む借り物競争だ。和真はスタート直後に素早く指令カードを引き、その内容を確認した。観客席に目を向けた和真は、目的の人物を見つけると迷わず駆け寄った。「花音、来てくれ!借り物に選ばれちゃったんだ!」


突然のことで驚いた花音だったが、和真の真剣な表情に引き込まれ、彼の手を取って競技エリアへと向かった。二人が手を繋いで走る姿には、観客席からの歓声と笑い声が上がった。


ゴール直前、和真は花音に軽く微笑みを送り、「一緒に走れてよかった」と優しく言った。花音も照れくさそうに笑い返し、その瞬間、二人の間には特別な空気が流れた。クラスメートたちはその様子を見守りながら、なんとなく温かい雰囲気を感じ取っていた。


借り物競争の結果は見事1位。和真と花音が並んでゴールラインを越える瞬間、周囲からは大きな拍手と歓声が沸き起こった。


競技が終わった後、花音は和真に興味津々で聞いた。「和真、借り物ってどんな内容だったの?」


和真は少し照れくさそうに笑いながら答えた。「うーん、特に決まった内容ってわけじゃないけど…仲のいい友達、って書かれてたかな。」


その曖昧な答えに、花音はにっこりと微笑んで「なるほど、そういうことね」とだけ言った。周りのクラスメートたちはそのやり取りを見守りながら、和真と花音の笑顔に温かい気持ちを抱いた。


体育祭は続くが、この瞬間が彼らにとって特別な思い出となり、勇斗たちはこれからも仲間としての絆を深めていくことを誓った。

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