第8話 体育祭前夜の電話

体育祭を翌日に控えた夜、勇斗はベッドに横たわりながら、スマートフォンを手に取った。画面には「美月」の名前が表示されている。胸の中に少しの緊張とともに、彼女への電話をかける。


「もしもし、美月?」


「こんばんは、勇斗。」


美月の声が電話越しに穏やかに響く。普段の冷静で落ち着いたトーンに、勇斗は自然と微笑んだ。彼女と過ごした練習の日々が頭に浮かび、彼の心を温かくする。


「明日はいよいよ体育祭だね。楽しみだけど、やっぱり少し緊張するね。」


「うん、私も。リレーって大事な役割だから、ちょっとプレッシャー感じるけど…」


「大丈夫だよ、美月。これまでの練習の成果が出るはずだし、何より俺たち四人で走るんだから、リラックスしていこう。」


勇斗はそう言って、美月を励ますように語りかける。これまでの練習を振り返ると、確かに四人の絆が深まっていることが感じられる。それを思い出すと、美月の声も少し柔らかくなった。


「ありがとう、勇斗。みんながいるから、私も頑張れる気がする。」


「俺たち、最高のチームだよ。だから、明日は楽しんで走ろう。結果よりも、この四人で走ることが大事なんだ。」


「そうだね。楽しんで、最高の思い出にしよう。」


二人の会話は穏やかで、体育祭を前にした緊張感を少し和らげてくれるようだった。お互いを励まし合いながら、心が少しずつ軽くなっていく。


「じゃあ、明日はいつも通りやるだけだ。考えすぎず、気楽にいこう。」


「うん、ありがとう、勇斗。おやすみなさい。」


「おやすみ、美月。明日、頑張ろう。」


電話を切った後、勇斗は気持ちがすっきりとした。美月も同じように感じていることを願いながら、明日の体育祭に向けて目を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る