第2話 初めての放課後

新学期が始まってから数日が経過し、美月はクラスにすっかり溶け込んでいた。彼女は毎日、笑顔で同級生たちと話し、誰に対しても礼儀正しく接していた。その姿は、まるで最初からこのクラスの一員だったかのように自然で、誰もが彼女の存在に慣れてきていた。


勇斗は、そんな美月のことが気になって仕方がなかった。彼女が自分の隣の席に座っているというだけで、彼の心は常にざわついていた。美月がクラスメートたちと楽しそうに会話する様子を見るたびに、勇斗は彼女が何を考えているのか、どうして自分に対してだけ特別な態度を取るのか、ますます知りたくなっていった。


ある日の放課後、勇斗は図書館で宿題をしようとしていたが、その道中で美月が一人で静かに本を読んでいるのを見かけた。彼女は、その穏やかな佇まいで周囲の喧騒から完全に隔離されているようだった。


「美月さん、こんにちは」

勇斗は軽く声をかけた。美月はページをめくりながら、顔を上げた。


「こんにちは、佐藤君。どうしたの?」

彼女はにこやかに微笑みながら答えた。その笑顔には、勇斗を安心させる何かがあった。


「ちょっと宿題をやろうと思って図書館に来たんだ。美月さんもここで勉強しているの?」

勇斗はそう言いながら、自分の机を確保しようとした。


「ええ、そうなの。ここで静かに本を読むのが好きだから」

美月は穏やかな声で答え、また本に目を戻した。勇斗は彼女が読む本のタイトルに目をやり、その興味深い内容に少し気を取られた。


しばらく静かに勉強をしていると、美月が突然話しかけてきた。

「佐藤君、最近どう?新学期が始まってから忙しいでしょう?」


勇斗は驚いたように顔を上げた。美月が自分の状況に気を使ってくれるとは思ってもいなかったからだ。


「うん、まあまあかな。君の方はどう?クラスに馴染めてる?」


「はい、おかげさまで。みんなと過ごすのは楽しいです」

美月は少し考え込みながら答えた。その真剣な表情に、勇斗は彼女が本当にクラスに溶け込むことを努力しているのだと感じた。


その後、勇斗と美月はお互いの近況を少しずつ話し合いながら、静かな図書館で過ごす時間を楽しんだ。美月は自分の趣味や好きな本の話をする中で、自然と自分を開放し、勇斗との会話もリラックスしたものになっていった。


放課後が終わり、図書館を出るとき、勇斗は美月に軽く手を振りながら言った。

「また図書館で会おうね。勉強がんばろう」


「はい、またね」

美月は微笑みながら手を振り返した。その笑顔に、勇斗はふと心が温かくなるのを感じた。

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