「君と僕の放課後シナリオ」

第1話 転校生との出会い

4月の柔らかな日差しが窓から差し込み、教室を暖かく包み込んでいた。佐藤勇斗は、いつも通り教室の自分の席に腰を下ろし、まだ静かなクラスの様子を眺めていた。

「おはよう、勇斗！」

親友の高橋大樹が元気よく教室に入ってくる。彼はいつものように朗らかな笑顔を浮かべ、机に荷物を投げ込んだ。

「おはよう、大樹」

勇斗は軽く手を上げて挨拶を返す。心のどこかで、この平凡な日々がずっと続けばいいのにと考えていた。

しかし、その静かな願いは、新学期最初の日に打ち砕かれることになる。

ホームルームの時間、担任の先生が教壇に立ち、クラス全員が注目する中、新しい生徒を紹介した。

「みんな、今日は新しいクラスメイトを紹介します。藤崎美月さんです。みんな仲良くしてあげてくださいね」

教室の扉が開き、そこに現れたのは、透き通るような白い肌と長い黒髪が美しい、まるで人形のような少女だった。彼女は一瞬でクラス全員の視線を集め、特に男子生徒たちは息をのんで見入っていた。

「藤崎美月です。よろしくお願いします」

美月は、控えめながらもはっきりとした声で挨拶をし、軽く一礼した。その仕草にはどこか気品があり、教室の空気が一瞬で変わったのを勇斗は感じた。

「じゃあ、藤崎さん、佐藤君の隣の席に座ってください」

先生の言葉に、美月は勇斗の隣へと歩み寄った。彼女が近づくたびに、勇斗は心臓が高鳴るのを感じた。

授業が進む中、美月は淡々とノートを取り、静かに授業に参加していた。彼女の存在感は特別で、クラスメートたちは彼女の話題で持ちきりだった。勇斗もその中に巻き込まれながら、美月のことをじっと観察していた。

その日は特に目立った出来事もなく、放課後が訪れた。勇斗は大樹と一緒に帰ろうとするが、ふと教室の後ろの方に目を向けると、美月が一人で教科書を整理している姿が目に入った。

「美月さん、何か困っていることがあるのかな？」

思わず声をかけたくなったが、結局はそのまま帰路についた。美月が勇斗に近づくのは、まだしばらく先になるだろうと感じながらも、彼女のことが気になって仕方がなかった。

次の日、授業中に美月が周囲と自然に溶け込み、クラスの一員として振る舞っている姿を見た勇斗は、彼女の冷静で落ち着いた様子にますます惹かれていった。しかし、彼女が自分に何か特別な理由で近づいているのかは、まだ全く分からなかった。