十二話
行けるところは全て行ったが、特にこれと言った収穫はなかった。
「はぁぁ……疲れたー」
どうやら他の人も収穫はなかったらしい。三階にて、夏希が二人掛けのソファに寝転がる。
「みなさんも探し回ったんですね」
「うん、やっぱり何もなかった」
結衣が肩を落とし答える。
「こんばんは。夕食の時間になりましたので、食堂へ集まってください」
昨夜と同じくアナウンスが流れる。
壁にかかっている時計を見ると、もう午後の七時になっていた。
「窓がないと時間の感覚、分からなくなりますね……」
彩香の言う通りだった。
食堂にて。
私たちの最終的な結論は、どこからも人間が出られるような場所は無いということ。
「三階の鍵のかかった扉から出られそうだけど、どうやったら開くのかしら」
「とりあえず……ご飯、食べましょうか」
私がそう言うと、皆が重いため息を吐き席を立つ。
「まー、今日で二日目でしょ?とりあえず、お風呂入ってー、ゆっくり寝ようよ。一回寝たらいい案が浮かぶかもねー」
夏希の言う通りかもしれない。一度頭をリセットした方がいいかも。
昨日となんら変わらない楽し気な会話をしながら食事が進んでいった。
「はぁ……疲れた」
自分の部屋に戻り、ベッドに身を投げ出す。
わけのわからない建物に閉じ込められて、精神がすり減っていくのを感じる。唯一の救いとしては、皆がいるということ。
自分と全く違う考え方をする、5人の女の子達。無意識に気疲れしてるのかもしれない。
もしここにとらわれたのが私だけだったら……話し相手もいなくて、一日で精神がおかしくなってたかもしれない。
友達を作ることに少し抵抗がある。過去の出来事からそうなっているのだ。でも、知人という立場では作れるようになった。
今頃、私の親は……心配してることだろう。
家に帰らないで、探してるんだと思う。
そんなことを考えていると、ウトウトし始めてきた。
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