十一話

「——あ、いいところに来たわね。今鍵を探してるんだけど、あなたも鍵を探すの手伝ってちょうだい」

 ここは管理人室らしい。部屋に入っていきなり、藍良に命令されてしまった。

「鍵……ですか?」

「ええ。一階には出口は無し。三階には鍵がかかった扉……そうなると、三階に出口があるとしか考えられない。管理人室なら何かしらの鍵はあるんじゃないかって思ってね」

「それはそうですね……って、そこに鍵あるんじゃないですか?」

 私は鍵かけの方を指さした。

「ああ、これは違うらしいの。この鍵では三階の扉は開かなかった」

 藍良が鍵入れを開けると、中には一つだけ鍵が入っていた。

 『物置部屋』というタグが付いている。

「この鍵は二階にある物置の部屋が開けられるの」

「物置ですか……」

「肝心の三階の扉は鍵では開かないの。電子ロックがかかっていて、この鍵とは仕様が元から違ってた」

「これっていつから見つけたんですか?」

「あなたが最後に起きてきた時よ。マスターキーでもあればいいんだけどね……」

 ため息交じりにそう言う藍良。

「ここって、ホントに管理人室なんですか?」

 率直な疑問を藍良に言う。

「何言ってんの、扉の上に『管理人室』って書いてあるでしょ」

「それはそうですけど……今も管理人室として使っているのかって疑問で、管理人どころか、私たち以外の人間を見てないですよね?」

「……そう言われれば、そうね。でも、食事が運ばれてくるってことは、やっぱり他に人がいるってことでしょうね。というか、食堂で待ち構えていれば捕まえられるんじゃ?」

「あー、そう思いますけど……どうやら、小さいエレベーターで食事が運ばれてくるって結衣さんが言ってました」

「じゃあ管理人とかを直接縛り上げて鍵を奪うって方法はナシってことね。……それじゃあ管理人室を探して鍵を手に入れるしかないわね。あなたも手伝って」

「は、はぁ……」


数分探した結果、特に収穫はなかった。

 作業服とかヘルメットくらいしかなかった。

「他の所探さないと……」


 二階に来た。

 二階は私たちの部屋が並んでいる、いわゆる寮のような感じ。

 その中にある部屋に来たけど。

「……何もないか」

 何も置かれていない棚や段ボールがあるだけの部屋だった。

 段ボールには新聞紙が入っていた。

 どの新聞も10年くらい前の物だった。


 ——結局、二階には何もない部屋と私たちの部屋があるだけ。次は三階に移動することにした。


「ここがさっき言ってた開かない扉……」

 先ほど藍良が言っていた開かない扉とはこのことだった。

 他の扉は半開きなのに対し、これは両開きで大きい扉だ。

 試しに腕輪をかざしてみるが、当然のごとく開かない。

 三階から二階に降りる階段がもう一つあることに気づく。そこから二階に降りて、倉庫のようなところに入ってみる。

「うーん……」

 倉庫に入ると、海崎茉希が何かをしていた。

「何かありました?」

「いや、特に何もないかな……」

 私に気づくと、調査していた手を止め肩を落とした。

「なんか工具とかないかなって思ったんだけど無いね。観葉植物の種じゃ何もできないし」

「武器を探してたんですか?」

「まあね。誘拐犯がいるんだもん、身を守る程度の装備は必要でしょ?」

「ま、まあ、そうですね……」

 だけど武器が身を守るための物じゃなくて、他人を攻撃するための道具になるかもしれない。

「あ、あの……殺し合いとか、そう言うのは映画とかで充分ですから」

 そう言うと、茉希が少しほほ笑む。

「分かってるよ。あくまで護身用。ここを出られるのは、生き残った最後の一人……別に真に受けてるわけじゃないし」

「……なら、良いんですけど」

 苦笑いを浮かべた。

「……接着剤?」

 段ボールの中を調べていると、使い古しの接着剤を見つけた。

 まだ中身はあるようだ。一応持っておこう。







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