十話
「ここは……救護室?」
部屋の中に入ると、ベッドや薬品棚が整然と並んでいた。
救護室は一階に廊下を挟んで二部屋あるようだ。もし何か怪我をした際にはここに来るといいだろう。
どちらも設備としては同じだが、薬品棚に入っている物が違うらしい。
「包帯とガーゼ、鎮痛剤……なるほど」
と、薬品が置いてある棚を調べていたのは彩香だった。
「あ、乃亜さん……」
「ここ保健室みたいですね」
私の部屋よりも簡素だけど、ベッドもある。薬品棚には……。
「……薬はあんまりないのか」
棚の中にはあまり物は入っていなかった。
「はい、鎮痛剤や簡素な消毒液とかはありますが……本格的な薬のようなものはないですね。ま、まぁ、薬なんか、私には分からないし……」
「でも、消毒液とか包帯とか、ちょっとした怪我には対応できるみたいですね」
「はい……」
私がそう言うと、彩香は少しほほ笑んだ。
「薬は下手に使うと毒になるから、置いていないのかも」
「た、たしかにそうですね……例えば、料理に薬を大量に盛る、とか……」
「実感はないけど、もし……殺し合いをしなきゃいけないってなったら、どうしたらいいんでしょうね」
ポツリとそんなことを言うと、彩香は私の手を握った。
「ううん、大丈夫ですよ。絶対、そんなことが起きないようにします」
「……うん」
彩香の温かい手の感触が伝わる。
「彩香さんって、落ち着いていますよね」
「えっ、私が?」
「はい。こんなよくわからない状況なのに、落ち着いて周りを見て行動している。それって、私にはできませんよ」
「……ははっ、ありがとう、ございます」
その後、救護室を調べるが、絆創膏くらいしか発見できなかった。
救護室には6台のベッドが設置されており、ベッドの間には小さな棚が備えられていいたけど、中身は空っぽだった。
事務室に来た。
部屋の中は事務をする場所というより、物置部屋のような感じになっていた。段ボールが置いてあったり、荷物を運ぶカートのようなものがあった。
机の下にある段ボールを調べてみると、中には雑誌が入っており、机の上にある雑誌もここから取ったように思える。
雑誌は最近の物ではなく、昔に発行されたもののようで、裏表紙から昭和に作られたことが分かった。
中を見てみると、今でいうスキャンダルのような記事が書いてあった。さらに都市伝説のようなものも収録されている。
読み進めていくとどうやら都市伝説の一部が切り抜かれていることが分かった。
その部分が何なのかは分からず、とりあえず雑誌についてはここで終わりにしよう。
さらに隣の部屋に行くと、そこには電力を供給する場所、つまり配電室という事が分かった。
ここから、この建物の電気を供給しているのだろう。
だが、電力を供給している機械があるだけで、その他には何もなかった。
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