九話

 食器を片付けた後、どこを探索しようか。

 三階はラウンジがあり、鍵のかかっている扉があると言われた。

 二階は私たちが寝ている個室があるだけ。プライベートの部屋を探し回るのはやめておこう。

「まずは食堂を探してみようかな。まだ見てないところもあるし」


 あたりを見回してみると、食事が運ばれてくるエレベーターのところで結衣が何かをしているのが目に入る。

「うーん……さすがに乗れないか」

「あの、結衣さん……何してるんですか?」

 食堂奥のエレベーターを覗いて、何やら考察をしている結衣。

 この機械で何が分かるのだろう?

「私たちの食事をどうやって提供しているのかとか調べてたの」

「あぁ。それって、ただご飯が運ばれてくるだけですよね?」

「うん。ここから運ばれて、朝早くに来た人が配膳をしてたの。この食堂には調理器具とか無いから、別の場所で調理して、これで運んでくるみたい」

 小型のエレベーターだ。

「だから、これに乗れれば外に出られるんじゃないかなって思ってるんだけど……乗れるかな」

 私よりは体は小さい。恐らく乗れるとは思う。

「んん……ッ、入った……っ、けど」

 結衣は小型エレベーターに頭を突っ込み、身体をぐいぐい押し込む。

 とりあえず入ったけど……どうやら重量オーバーらしい。

「…………ダメか」

 身体が小さいからと言っても、体重はそれに比例しないようだ。

「はぁ……」

 結衣は少々残念そうにエレベーターから出ると、重量オーバーのブザー音が止む。

「やっぱり無理でしたね……」

「多分だけど、この建物は地下か三階より上があるかもしれないね。このエレベーターが繋がっている先、位置的に2階とか三階には調理場は無いし……」

「なるほど……」


 結衣にそう言われ、地下や上の階に繋がる階段のようなものが無いか探してみるが、どうも見当たらない。

「3階よりも上の階か地下が存在するっぽいけど、分かんないなぁ……」

 特に収穫は無かった。


 もう一度食堂に戻ってきて、まだ見てない部屋がある。

 そこに入ってみると、壁には木製の棚が取り付けられている。

「ここは……倉庫?」

 食品や食器をしまう部屋のようだ。棚には特に何も入っていない。

 考えてみるとそうか。食事は食堂に取り付けられているエレベーターから支給される。わざわざ食材をここに置いておく必要はないか。

 

 廊下に出て近くの部屋に入ってみる。

「うー……」

 と、そこは浴室だった。

 浴室には夏希が立ち尽くしていた。

「どうしたの?」

「いやー、朝風呂入りたかったのに開かないのー」

 ほんわかした口調だが、少しイラ立っているようにも聞こえる。

 浴室の扉に何かの部品をかざしている。

「それは……?」

「これ?乃亜ちゃんの腕にもついてるよ」

「……腕輪?」

 そこで気づく。自分の右腕に、何かの腕輪が付いていることに。

「それを使って、この建物内の扉を開けることができるの—」

「あ、そうだったんだ」

 扉の開錠の仕方を教わった。

「えっと……お風呂って、午後の二時からだったはずだよ」

「……朝から入りたかったのにぃー」

「…………」

 確かに、夏希の言う事も分かる。私も寝癖を直したいし。

 とりあえず浴室は、特に何も無しっと。




 

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