八話

 なぜ私たちが殺し合いをしないといけないのか。

 そもそも、本当に一人になったら脱出できるのか怪しいところ。

 単なる身代金目的だったら、殺し合いなんかさせないと思うのに。

 犯人が何人なのかも、目的すらも分からない状況。

 この建物の中で出会った女の子たちの中で、人を殺すような人は……いない、はず。

 でも……みんなの事は名前以外ほとんど知らない。

 かつて友達だった女の子の裏の顔を見たことがあるから、無いとは絶対言い切れない。



「んん……っ」

 目が覚める。見慣れない天井が視界に広がり、横を見ると見慣れない機械がある。

 とりあえず一日ここで過ごしたようだ。

 私は、生きていた。無事に目が覚めて良かった。

 特に変な夢を見ず助かった。

 あたりを確認する。昨日と同じ場所だ。しかし、そこであるものに気づく。

「……8時前?」

 いつの間にあったのだろう。時計が壁に設置されている。

 ということは……誰かがこの部屋に入ったという事だよね。

「…………」

 自分の体を触る。別におかしいところはない。

「はぁ……」

 何かされたかもしれないと思ったが、大丈夫そうだ。

 あまり実感はないが、変わらない現実にため息が出る。

 寝起きで頭が回っていないが、今日やることを考える。


「おはようございます。朝食の時間になりましたので、食堂に来てください」


 と、事務的なアナウンスが聞こえてくる。

 まだベッドでゆっくりしたい気持ちはあるが、この部屋にはトイレもシャワーも食べ物もない。最低限、外に出ないと。

 少し痛む頭を押さえつつ立ち上がり、部屋の外へと出る。


「おーはよー」

 食堂へ行くと、朝とは思えないほど元気な夏希が挨拶をしてくる。

「お、おはよう……えっと、昨日はごめんね」

「あー、大丈夫だよ。乃亜ちゃんこそ大丈夫なのー?」

「う、うん……」

「さてと、それぞれご飯分けてるから食べて—」

 テーブルには、6人分の食事が分けられていた。どうやら、今日はパンらしい。

「今日はゼリーですか……おいしそう」

 分けられた食事を見て、彩香は少しワクワクしているように見える。

「マキは少しでいいんで……誰か食べる人いる?」

「んじゃあ、私もらうよ」

 茉希がそう言うと、すぐに結衣が貰いに行く。

 昨日はあんなアナウンスがあったのに、仲良く朝食を食べている。

「……いただきます」

 私は茉希の隣の席につき、パンを食べた。

 パン、目玉焼き、サラダ、ゼリーと言った、自分の家でも出てくる朝食だった。

 こんな状況でも美味しいと感じる。

「ごちそうさま」

「結構美味しかった」

 私が食べ始めて数分した後、食べ終わる人たちもいた。

「ずっとここにいるわけにもいかないし、出口を見つけるわよ」

「簡単に見つかるわけないと思うけど、まずは見てみるしかないか」

 藍良と結衣はさっさと食堂から出て行ってしまった。

「私も色々探し回りたいな」

 まだ自分の足でこの建物を見て回っていない。

「ま、ここに閉じ込められている間、何もできないし」

 茉希の言う通りだった。とりあえずご飯を食べ進めた。





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る