七話

「……あの、結衣さん?」

「どうしたの?」

 一緒にお風呂に入っている時、私は結衣に声をかけると不思議そうにこちらを見てきた。

「……アナウンスが言っていたことって、本当なんですかね?」

「んー……どうもそれっぽいよね。マジで最後の一人にならないと出られない感じするし」

「やっぱり……」

 そう言われ肩を落とす。

 

 殺し合いなんかしたくない。誰かが死ぬところなんか、見たくない。


 恐らく、他の人たちもそう思っていることだろう。

「一人にならないと、永遠とここにいるってことですよね」

「そうだね。老人になってもここにいるとか、考えたくないけど……」

「…………」

 私は深いため息をついた。

 

 空いた時間で食堂や自分の部屋は見て回ったが、別にこれというほど収穫はない。

 部屋ではよくわからない機械が動いているだけだし、食堂には食器が入った棚があるだけ。

 

「そういえば結衣さんって、他の部屋とか見て回ったんですか?」

「ううん。自分の部屋は見て回ったけど、それ以外は見てないね」

「……そっか」

「目が覚めたらこんな場所にいたから、散策するにも一人はちょっと危険だなって思ってたし。私だけここにるいのかと思ったら、他にも人がいたなんてびっくりしたよ」

「私もです」

「とりあえず、やれることをやるしかない」

 そう言って結衣は勢いよく湯船から立ちあがる。

 その時、結衣の真っ白な肌がすごく奇麗に見えた。

「ね、身体洗ってあげようか?」

「えっ、そ、そんなこと……いいですよ」

 結衣にそう言われ、急に恥ずかしくなりそっぽを向く。

「いいから、ほら上がって」

「え、あの……っ」

 半ば強引に湯船から引きあげられ、シャワーの所へと向かう。

「…………」

 恥ずかしい。こんな未熟な身体を見られるなんて……。

「じゃあ背中洗うね」

「あ、はい……」

 泡立ったタオルで背中を洗われる。……くすぐったい。

「乃亜ちゃんって中学一年生って言ったっけ?学校はどうなの?」

 なぜか手つきがいやらしく感じるのは気のせいだろうか。そんな中、結衣が学校について訊いてきた。

「ええと……まあ、少し慣れたかなって思ってます」

「へえ、なんか苦労していることとか無い?」

「……今日食堂であったんですけど、死にたくない、とか、殺し合い、とかっていう言葉を聞くと、ちょっと感情が抑えられなくなって、それを面白がってからかわれたり……その、ごめんなさい。あの時は取り乱して」

「ああ、大丈夫だよ。今まで生きてきて、トラウマがあったんだろうなって思ってたの。……とにかく、誰一人死なせない。あなたも」

「……はい。ありがとうございます」

 殺し合いなんか絶対、起きるはずない。こんないい人たちがいるんだから。

 そう思いつつ、ちょっと恥ずかしい気持ちもありながら体を洗われた。


 

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