六話
再び食堂に行くとそこには、茉希、彩香、夏希の三人が何かをしている様子だった。
「うーん、ダメか―」
「抜け出せそうな穴みたいなのは無いですね……」
「どこか壊して抜け出せそうなアイテムか何かは無いかな」
「確かに、そうですね。自分たちで抜け道を作るしか……」
どうやら三人は、脱出できそうな場所を探しているようだ。
「ていうかー、今何時なんだろう」
「そう言えば、時計を見ていないですね……」
自分の部屋もそうだったが、どの部屋にも時計はついていない。
アナウンスでしか時間は分からない。
しかもそれは、決まった時間——食事が出てくる時間だけなのだ。
「壁とか壊せるアイテムが無いかと思ったけど、よくよく考えてみると……武器を持ってたら、それこそ殺し合いになりそうだよね」
「……まーね」
私もここでぼーっと話をしているところを眺めている場合ではない。
少しは脱出できるように、色々と調べてみたい。
「ま、本格的に行動するのは明日からにしようか」
「は、はい」
「りょーかい」
とそこで、三人の話は終わったらしい。食堂の入り口で立っていた私に三人が気づく。
「お、乃亜ちゃん。元気になった—?」
「あ、はい。茉希さんのおかげで」
「じゃあマキたちは、そろそろ寝るね。何かあったら部屋に来て」
「分かりました」
「乃亜さん、また明日おしゃべりしましょう」
「はい」
軽く会話をした後、三人は少し疲れた様子で下の階へと降りて行った。
食堂。
「私たちがご飯を食べる所だけど、何かあるかな」
壁の方には食器が数枚入っている棚がある。それ以外目を引くものはない。
シンクまわり。普通だったら包丁やまな板があると思うが、ここにはない。それは当然だ。なぜなら、食事はもうすでに出来上がった状態で届くのだから。
それに、包丁なんて置いていたら、普通に殺し合いが起こせる。
キッチンの横には小さなゴミ箱。何も入っていなかった。
「……はぁ」
数分見て回ったが、別に目を引くようなものは無かった。
「これからどうしよう」
ハイプ椅子に座り、一人呟く。
もし一人にならなかった場合、老人になっても、ずっとここにいることになるのだろう。
だからといって、誰かを殺すような考えは一切ない。それに、自分が死ねばいい、とも思っていない。誰も、死なせない。殺させやしない。
私は、みんなで脱出したい。
一人も欠けることなく、ここを脱出するんだ。
「……まずは、明日になってからが本番。とにかく、寝ないと」
眠気はそこまで無いが、明日に備えて無理にでも寝た方がいいと思った。
「あれ、まだいたんだ」
席を立とうとした時、入口から声がした。
「結衣さん……」
私よりも身長は低いが、高校一年生の高橋結衣。
「大丈夫?なんか、顔暗いけど」
「あ、あぁ……ちょっと」
「まあ、しょうがないよ。こんな状況だもん。ね、お風呂行こうと思ったんだけど、一緒にどう?」
「えっと……」
意外なお誘いだった。特にお風呂に入るなんて考えていなかったけど……。
「まずは、仲を深めないと。行こ」
「あ、あぁ……」
私が返事をするよりも先に、私の手を取り食堂を出る。
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