一章 見知らぬ女の子

一話

「…………?」

 ——目が覚めると、そこは見慣れない場所だった。

 少し頭が痛い。それと同時に、なんでこんな場所にいるのか理解できない。

 昨日は、何してたっけ。いつも通り学校に行って、放課後にコンビニに寄って……あれ、そこまでしか覚えてない。

「……え?」

 ぼんやりとした視界の中、ふと右腕には何かのチューブのようなものが繋がれているのが分かった。

 そのチューブの中には、緑色のような液体が流れていた。

 チューブを辿っていくと、腰のあたりには何かの装置が付けられておりそこに繋がっていた。

「……」

 無言で辺りを見回してみる。

 壁は所々汚れており、少なくとも年数が経過した建物だという事は分かった。

 そして私が寝ていたベッド。簡素なパイプベッドで、白いシーツと白い布団が備わっていた。病院のベッドに似ているけれど、上体を起こす装置はついていない。

 部屋の隅にはロッカーと小さなゴミ箱。

「なに、これ……」

 それ以上に疑問を感じたのは、ベッドの右側にある大きな装置。

 何が何だか分からない。少なくとも動いている音はする。

 とりあえず部屋の中を散策してみることにした。


「……寒い」

 布団を掛けていたので分からなかったが、この場所は以外にも肌寒い。

それに……どうして私は下着姿なのだろう。

別に可愛いものはつけていないが……うーん、どこかに服はないだろうか。

「あ、ロッカー」

部屋の隅にあるロッカーを開けてみる。

中には明らかに自分のものでは無い服とズボンが入っていた。

ここでワガママ言ってられないし、とりあえずこれを着よう。

「……ぴったり」

なぜか服のサイズがピッタリだった。

「ええと……まずは、なにか無いか調べるか」

部屋の中を調べてみる。

まずはロッカー。服の他には何も入っていない。私の連絡手段である携帯はない。

その隣には小さいゴミ箱。特になにもない。

次はベッド。下になにか無いかな。

「……ないね」

ベッドの隣の機械を見てみる。

この機械は何に使うのだろう。モニターのようなものがあるが、何も映ってない。


「はぁ……」

今日は何月何日なんだろう。この部屋には窓がないので、朝なのか夜なのかも分からない。時計もない。

「……出てみようかな」

もしかしたら人がいるかもしれない。

部屋の外に出てみると、左側は薄汚れた壁で行き止まり。


「――あ、最後の子見つけた」

「えっ?」

右側から声が聞こえた。そちらを向くと、同い年くらいの少女が2人こちらを見ていた。

「これで全部……ですか?」

「うん。部屋の数的に最後」

「え、ええと……あなたたちは?」

少しオドオドしながらこの人たちに尋ねる。

「あー、私は曽根藍良そねあいら

左側の小柄な少女が答える。

「あたしは壮馬彩香そうまさやか……です」

 右側の少女は少し震えているように見える。

「とりあえず、ラウンジにみんな集まっているから私について来て」

「あ、はい……」

 藍良が歩き出す。私はその後を追った。

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