第5話 おっさんシーカー

 闘争の末荒れ果てたコンビニ内にて。


 ミーナの行動を見ていたワゴンセールは肩を落としながら嘆いた。


「ミーナの魔導核から、送られてくる情報は、事実、なのか。百年も前に、文明が滅びていたとは……。どこのサーバーに、アクセスしても、繋がらないし、周辺環境の、ステータスが、めちゃくちゃな値を示しているから、当機の故障だと、思っていたんだが……。世界の方が、先に故障していたのでは、世話がない」


 ミーナはワゴンセールの魔導核に魔法で干渉し、ユーザーとなっていた。

 ゴーレムのユーザーになるということは、同時に魔導核をリンクさせて記憶の一部を共有するということでもある。

 そこから得た情報がおかしい事になっていたので、彼は自らの故障を疑っていたのだ。

 ミーナが色々な手続きを吹っ飛ばしてユーザーとなったことや、文明が崩壊していることも、情報がおかしい事になっていた原因である


「ほほう、中々に優秀みたいだな。【書換】リライトしても事実を理解すると、暴走を再開する奴もいて厄介なんだが……」

『危なかったの!?』


「発狂するモノも、出てくるだろうな。データセンターから、切り離されている間は、良いが、我らは、人格を人間そっくりに、作られすぎた」

『ワゴンセールさん……』


 深刻そうなワゴンセールの横を通り過ぎたミーナは、両断された女性型ゴーレムを指さしながら依頼する。


「はっはっは! 考えていても始まらないし、約束通りに修理場所に連れて行ってやるよ! コイツもついでに連れて行ってやろうぜ。綺麗に両断されているから、きっと魔導核は無事だ。女性型ゴーレムは妙に腰が細くって、胸や頭部に魔導核が配置されてるのが相場だしよ!」

『こんな事になっていても直せるの!?』


「そうだな。元同僚を、置いていくのは、忍びないし、私も赤錆の浮いた体では、少々恥ずかしい、というものだ。期待しても、良いのか?」


 ミーナの依頼を受けたワゴンセールは、荷物を持つのに邪魔なガトリング砲の銃身を後部にスライドさせると、惨殺されていたゴーレムを慎重に持ち上げた。


「おうよ! 中々の収穫が集まったしな! 釣った獲物はショボかったが、コンビニは全然荒らされていなかったから、大漁だ!」

『たくさんのお宝なの!』


 ミーナの懐には大量の魔道具が入っており、ニッコニコだ。

 その様子に二分割されてしまっているゴーレムを丁寧に持ったワゴンセールは、ちょっと引き気味で返答する。


「持ち主の、居なくなった、モノを漁る、探索者か。昔なら、法に引っかかったの、だが……」


「法なんて無いぞ! 俺様を守ってくれるのは俺様だけだぜ! 自助努力ぅ! ですかね! ガハハ!」

『じじょどりょく! 何だか素敵な響きなの!』


 爆笑するミーナはうめき声を上げる元オオカミたちを足蹴にして放置し、荒れ果てたコンビニから立ち去る。

 その後を慎重に両断された女性型ゴーレムを持つ鉄錆の浮いたゴーレムが続いた。


 荒廃とした有様の店内は、ミーナが来たときより更に荒れ果て、音声を出す魔道具の代わりに元オオカミたちがうめき声で出迎えてくれる、大して価値のない場所となった。


 彼女の『釣り』はともかくとして探索自体は大成功である。

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