第15話 変わりゆく日常

 シャドウ・ネクサスの襲撃から一週間が経過し、QH学園はようやく日常を取り戻しつつあった。しかし、あの日の出来事は、生徒たちの心に深く刻まれていた。特に、悠哉とヒロインたちの関係は、微妙な変化を見せ始めていた。


◇◇◇ 氷雨 彩姫の視点


 研究室で最新のデータを分析しながら、彩姫は思わずため息をついた。


「護斑……いいえ、悠哉くんの『クォンタム・シンクロ』、一体あれは何だったの...」


 彼女の頭の中で、金色に輝く【限槍零式】の姿が蘇る。あの時の圧倒的な力、そして完璧な連携。彼女の論理的な思考では説明のつかない現象だった。


「あの不出来な彼が、あんな力を……」


 彩姫は自分の胸の高鳴りに気づき、少し赤面した。


「まさか、私が彼のことを……?いいえ、これは純粋に科学的な興味よ」


 そう言い聞かせながらも、彼女の心の中で、悠哉の存在が大きくなっていることは否定できなかった。


◇◇◇ クロエ・ヴィアールの視点


 調理室で新しいレシピを試しながら、クロエは楽しげに鼻歌を歌っていた。


「ユウヤ、きっとこの料理を気に入ってくれるわ!」


 彼女の頭の中には、戦いの後、病院のベッドで目覚めた悠哉の姿があった。あの時の彼の弱々しい笑顔が、クロエの心を強く揺さぶっていた。


「あんなに強くて、でもあんなに優しい人……フランスにもいないわね」


 クロエは自分の気持ちに少し戸惑いながらも、料理に込める想いは日に日に強くなっていった。


◇◇◇ シャーロット・グリフィスの視点


 学生会室で書類を整理しながら、シャーロットは窓の外を見つめていた。


「護斑……いいえ、悠哉。あなたは一体何者なの……」


 彼女の瞳に、あの日の悠哉の勇姿が映る。貴族としてのプライドが、彼の力の前にもろくも崩れ去った感覚。


「私の価値観を、あなたは根底から覆したわ」


 シャーロットは自分の頬が熱くなるのを感じ、慌てて書類に目を戻した。


「まさか、私が平民に……?冗談じゃないわ」


 そう言いながらも、彼女の心の中で、悠哉への興味が日々大きくなっていくのを感じていた。


◇◇◇ 鳥居塚 楓の視点


 道場で剣の素振りをしながら、楓は深い呼吸を繰り返していた。


「護斑殿……いえ、悠哉殿の力、まるで古の英雄のよう」


 彼女の脳裏に、金色に輝く【限槍零式】の姿が浮かぶ。日本の伝統と最新技術の融合、それは楓が求め続けていたものだった。


「彼こそ、私が仕えるべき主なのかもしれません」


 楓は自分の心の内に芽生えた新しい感情に戸惑いながらも、それを受け入れようとしていた。


◇◇◇ ベティーナ・シュメリングの視点


 訓練場でシミュレーション訓練を行いながら、ベティーナは眉をひそめていた。


「モリムラ……いや、ユウヤの力、あれは兵器として最強だ」


 彼女の記憶に、戦場を制圧する悠哉の姿が焼き付いている。軍人としての彼女は、その力に畏怖と憧れを感じずにはいられなかった。


「だが、あの力は諸刃の剣……私が守らなければ」


 ベティーナは自分の中に芽生えた保護欲に戸惑いつつも、それを否定することはできなかった。


◇◇◇ 悠哉の視点


 教室の窓から外を眺めながら、俺は考え込んでいた。


「あれから、みんなの様子が少し変わった気がする……」


 彩姫の視線が以前より柔らかくなった気がする。クロエの料理が、より一層俺の好みに寄り添ってきている。シャーロットが、時々俺を見て慌てて目をそらす。楓が、より一層丁寧に接してくれるようになった。ベティーナが、妙に俺のそばにいることが増えた。


「気のせいかな……」


 そう思いつつも、俺の心の中で、彼女たちへの想いが少しずつ変化していくのを感じていた。


 これから先、俺たちの関係はどう変わっていくのだろう。そんなことを考えながら、俺は空を見上げた。


 青い空の向こうに、まだ見ぬ未来が待っている。

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