第11話 新入生歓迎Q-アルマ競技大会

 朝日が昇り始めた頃、QH学園の広大なグラウンドには既に多くの学生たちが集まっていた。今日は新入生歓迎Q-アルマ競技大会。俺、護斑悠哉も、唯一の男性操縦士として注目を集めながら、緊張した面持ちで会場に到着した。


「Mon Dieu! ユウヤ、準備はできてる?」


 クロエの明るい声に振り返ると、彼女は既にQ-アルマ専用スーツに身を包んでいた。その姿は、まるでフランスの国旗を思わせる鮮やかな配色で、彼女らしい華やかさを醸し出していた。


「ああ、なんとかな」


 内心では不安が渦巻いていた。これまでの訓練では、まだQ-アルマを完全にコントロールできる自信がなかったからだ。


 会場の一角では、氷雨彩姫が冷ややかな目で周囲を見回していた。彼女のQ-アルマ【霜雪帝姫そうせつていひ】は、その名の通り氷の結晶をまとったかのような美しさで、見る者を圧倒していた。


「護斑。今日の競技、あなたの実力を見せてもらうわ」


 彩姫の言葉には挑戦的な響きがあったが、どこか期待のようなものも感じられた。


 開会式が始まり、学園長の龍堂真司が壇上に立った。


「諸君、今日という日が、君たちの新たな絆の始まりとなることを願っている。Q-アルマは単なる機械ではない。君たちの魂と共鳴し、成長する存在だ。今日の競技を通じて、その絆を深めてほしい」


 厳かな雰囲気の中、俺たちは自分のQ-アルマと対面した。「限槍零式」が俺の前に現れた瞬間、不思議な高揚感が全身を駆け巡った。


 最初の競技は、チーム対抗障害物レースだった。俺たちのチームには、彩姫、クロエ、そして鳥居塚楓が加わった。


「作戦は簡単よ」


 彩姫が口を開いた。


「私が先頭で障害物を凍結し、楓が風で砕く。クロエは幻覚で敵を惑わせ、護斑はそのすきに突破口を開く」


 その作戦は見事に功を奏した。俺たちのチームワークは、まるで長年一緒に戦ってきたかのようにスムーズだった。特に、楓の【風刃神剣ふうじんしんけん】による精密な風の操作は、凍結した障害物を瞬時に粉砕し、俺たちの突破を容易にした。


 レース中、突如として現れた予想外の障害物に直面した時、俺の中で何かが覚醒した。「限槍零式」が、まるで俺の思考を先読みするかのように動き、難所を難なく突破したのだ。


「すごいわ、ユウヤ!」


 クロエの声が響く。


「まるで、Q-アルマと完全に同調しているみたい!」


 彩姫も珍しく感心した様子。


「護斑……あなた、やるじゃない」


 その瞬間、彼女の表情に一瞬の柔らかさが見えた気がした。


 最後の競技、チーム対抗キャプチャー・ザ・フラッグでは、シャーロットとベティーナも加わり、総力戦となった。ベティーナの的確な指示のもと、シャーロットの【Royal Aegis《ロイヤル・イージス》】による防御と、俺の突破力を組み合わせた戦略で、見事優勝を勝ち取った。


 表彰式後、夕暮れ時のグラウンドで、俺たちは集まった。疲れてはいたが、全員の顔に達成感に満ちた笑顔が浮かんでいた。


「ねえ、みんな」


 クロエが声をかけた。


「今日の晩餐は特別よ。私が腕によりをかけて作るわ。フランス料理と和食のフュージョン!」


「乾杯しましょう」


 シャーロットが言った。「紅茶で」と付け加え、みんなを笑わせた。


 その日の夜、食堂で俺たちは語り合った。Q-アルマのこと、お互いのこと、そしてこれからの未来のこと。この日を境に、俺たちの絆は確実に深まったと感じた。


 そして、俺は静かに誓った。この仲間たちと共に、どんな困難も乗り越えていこうと。

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