第10話 隠された才能

 夏の陽射しが照りつける中、QH学園の特別訓練場で新入生歓迎Q-アルマ競技大会に向けた合同訓練が行われていた。俺たちのチームは、他のチームと対戦形式の訓練に臨んでいた。


「護斑!右フランクを警戒しろ!」


 ベティーナの鋭い声がインカムから響く。


「了解!」


 俺は必死に応じるが、動きが遅い。敵チームのQ-アルマが俺の死角から迫ってくる。


「ユウヤ、気をつけて!」


 クロエの悲鳴のような声。


 その瞬間だった。時間が止まったかのように、周囲の景色がスローモーションで動き始める。そして、俺の意識が急速に拡大していくのを感じた。


「な...何だこれ?」


 突如、チームメイト全員のQ-アルマの感覚が俺の中に流れ込んでくる。彩姫の冷たさ、クロエの軽やかさ、シャーロットの威厳、楓の柔軟さ、ベティーナの堅牢さ。それらが全て俺の中で混ざり合い、一つになっていく。


「護斑、何をしている!」


 彩姫の驚いた声が聞こえる。


 気づくと、俺のQ-アルマは複雑な動きで敵の攻撃を回避し、同時に反撃を繰り出していた。まるで5人分の経験と技術を同時に使っているかのような感覚。


「なんだこれ……こんなの初めてだ」


 俺の動きに驚いた敵チームが態勢を崩す。その隙を突いて、チームメイトたちが一気に攻勢に出る。


「Mon Dieu! ユウヤ、素晴らしいわ!」


 クロエが歓声を上げる。


「まさか、あなたに才能があるなんて……」


 シャーロットの声には驚きが混じっている。


 楓が静かに言う。


「護斑殿、これが貴方の真の力なのですね」


「Wunderbar! これぞチームワークというものだ!」


 ベティーナが興奮気味に叫ぶ。


 しかし、その瞬間はすぐに過ぎ去った。急に力が抜けたように、俺のQ-アルマの動きが鈍くなる。同時に、激しい頭痛と疲労感が襲ってきた。


「うっ……!」


 訓練は俺たちチームの勝利で終わったが、俺は疲労困憊でその場に倒れ込み、意識を失ってしまった。


 医務室のベッドで目を覚ますと、チームメイトたちが心配そうに俺を見下ろしていた。


「大丈夫か、モリムラ?」


 ベティーナが珍しく優しい声で聞いてくる。


「あ、ああ……なんとか」


 彩姫が腕を組んで言う。


「あれは一体何だったの?普通ではありえない動きだったわ」


「私も気になります」


 楓が頷く。


「まるで、私たち全員の特性を使っているかのようでした」


 クロエが興奮気味に言う。


「ユウヤ、すごかったよ!まるでスーパーヒーローみたいだった!」


 シャーロットはじっと俺を見つめている。


「……面白い。面白いわね。貴方の隠された才能、しっかり見させてもらったわ」


 俺は混乱しながらも、なんとか説明しようとする。


「俺にも、よくわからないんだ。ただ、みんなの力が俺の中に流れ込んでくるような……」


 そのとき、医務室のドアが開き、学園長の龍堂真司が入ってきた。


「護斑君、よく頑張ったな。だが、これからが本当の挑戦の始まりだ」


 俺たちは驚いて学園長を見つめる。


「君の能力、それは『クォンタム・シンクロ』と呼ばれるものだ。他のQ-アルマと同調し、その能力を引き出す……非常に稀有な才能だよ」


 学園長の言葉に、部屋中が静まり返る。


「これからこの能力を磨いていけば、君はきっと素晴らしいQ-アルマ操縦士になれる。そして、この5人と共に……」


 学園長はチームメイトたちを見渡し、笑顔で続けた。


「世界を変える力を手に入れることができるだろう」


 俺は呆然としながらも、チームメイトたちの顔を見る。彼女たちの目には、驚きと期待、そして少しの不安が混ざっているように見えた。


 この日、俺の中に眠っていた特殊な才能が目覚め、そしてチームとしての新たな挑戦が始まったのだった。

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