第9話 チームの絆
Q-アルマ訓練場。俺たちの新しいチームが初めて集結した。
「みんな揃ったわね」
「まずは、それぞれの特性を確認しましょう」
俺は緊張で背筋が伸びる。「まるで面接みたいだな」と心の中でつぶやく。
「私から始めるわ」
彩姫がQ-アルマを起動させる。彼女のQ-アルマ【霜雪帝姫︎《そうせつていひ》】が青白い光を放つ。
「私のQ-アルマは、周囲の熱エネルギーを吸収し、極低温の場を生成できる」
彩姫の演武を見ていると、まるで冬の妖精を見ているようだった。
「Mon tour!」
クロエが元気よく前に出る。彼女のQ-アルマ【Mirage Gourmand《ミラージュ・グルマン》】は、淡いラベンダー色に輝いていた。
「私のQ-アルマは、敵の感覚を惑わす幻覚を生成できるの」
クロエの演武中、訓練場が一瞬、パリのカフェに変わったように見えた。
「わたくしの番ね」
シャーロットが優雅に歩み出る。彼女のQ-アルマ【Royal Aegis《ロイヤル・イージス》】は、深いロイヤルブルーで威厳を放っていた。
「わたくしのQ-アルマは、周囲の機械を支配下に置くことができますわ」
シャーロットの演武で、訓練用ドローンが彼女の意のままに動き回る様子は圧巻だった。
「拙者の番ですね」
楓が静かに立ち上がる。彼女のQ-アルマ【
「拙者のQ-アルマは、強力な風の障壁を生成し、敵の攻撃を封じ込めることができます」
楓の演武中、目に見えない風の壁が周囲を包み込む感覚に、思わず息を呑んだ。
「我の番だな」
ベティーナが力強く前に出る。彼女のQ-アルマ【Eiserne Festung《アイゼルネ・フェストゥング》】は、重厚な灰色で防御力を感じさせた。
「我のQ-アルマは、装甲の形状を自在に変化させることができる」
ベティーナの演武では、Q-アルマが様々な形に変形する様子に目を奪われた。
そして最後に俺の番が来た。緊張で手が震える。
「俺のQ-アルマは……」
言葉に詰まる俺を見て、クロエが優しく微笑んだ。
「大丈夫よ、ユウヤ。みんなで見つけていけばいいの」
その言葉に、少し心が軽くなる。
「そうね」
彩姫が続けた。
「QH学園で唯一、護斑のQ-アルマだけ特性どころか機体名も明らかになっていない。それらを探ることも私たちのチームの課題ね」
彩姫が言うように、俺のQ-アルマは特性はもとより、機体名すら明らかになっていない。Q-アルマの自己成長機能の作用もあり、みんな形状や色が変わっているのだが、俺だけが初期状態のまま。
通常なら、Q-アルマを使用し始めて2週間も経たないうちに、最初の変化が訪れる。そして1ヶ月もすれば、一通りの変化が終わるはず。変化する中で特性や個別の機体名が明らかになっていく。だが、1ヶ月たっても初期状態のままという異常事態に、教官や技術スタッフだけでなく、クォンタム・コアの主任研究員だった学園長まで引っ張り出した。だが、結果は何もわかっていない。男女の違いで、変化にかかる時間が変わるのかもしれない、という推測を立てたが、実証するには俺以外の男性Q-アルマ操縦士候補生を探す必要がある。
そんなことを考えていると、シャーロットが目の前で腕を組む。
「まあ、特性がわかるまでは、わたくしたちの足を引っ張らないようにだけ気をつけなさい」
「まだそこまで過激な訓練は
ベティーナが口を挟む。
「チームとして勝つためには、全員がベストな状態である必要があるからな」
「そうですね」
楓が頷く。
「護斑殿の持つ可能性を、みんなで引き出していきましょう」
俺は思わず笑みがこぼれる。最初は戸惑いばかりだったが、こうしてみんなと話していると、少しずつチームの一員として受け入れられている気がした。
「よーし!」
クロエが両手を叩く。
「じゃあ、作戦会議の後はみんなでお茶会しましょう!私が新しいスイーツを作ってきたの」
そんなクロエの提案に、みんなが思い思いの反応を示す。彩姫は小さく溜め息をつきながらも頷き、シャーロットは「まあ、たまにはいいでしょう」と言い、楓は「楽しみですね」と微笑み、ベティーナは「甘いものは栄養補給に適している」と真面目に答えた。
俺はこの光景を見て、心の中でつぶやく。「ハーレム...じゃなくて、チームって、こういうものなのかな」
そして、これから始まる新しい挑戦に、期待と不安が入り混じる。だが、この5人の仲間たちと一緒なら、きっと乗り越えられる。そう信じて、俺は新たな一歩を踏み出した。
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