供養
たかし@
また日は昇る
落ちた。また落ちた。
五月の某日、今日は誕生日だというのに、ケーキ一つ用意していないのは、果たして希望からか、絶望からか。ただ一つ言えるとすれば、私はまた、新人賞に落ちたということだ。
春というには遅すぎて、夏というには早すぎる。そんな季節、それが五月。私にとっては希望に満ちた月であり、絶望に暮れる月でもある。某社の某文芸新人賞の発表日がある月だ。いや、電話がかかってこない時点で、落ちているのは明白だから、わざわざ落ちているのを確認する日といった方が正確だろう。そして今日は私の誕生日。また一つ、小説家に成れないまま歳をとった。
落ちた原稿をネットの小説投稿サイトにあげる。これが毎年の恒例だ。数年続ければ、それなりのファンがついて、投稿して数十分で無数のブックマークと応援コメントが付く。そのPV数に一喜一憂するのも、やはり恒例となっていた。
十数年、小説家を志望してきて、文章に自信を持てたことはない。毎度不安になりながら応募し、やはり毎度落選する。惜しいところまで行ったこともあったが、近年はそんなこともめっきり起こらなくなった。テキストエディターの使い方だけが上手くなって、文章はむしろ下手になる一方に感じられた。
何が悪かったんだろう。落ちるたびに考える。その題材やテーマを、疑問に思ったことはない。むしろ自身のある方だ。それに関して自分は天才だと、ずっと信じてきた。ただそれを出力する文章力が足りない。どれだけ書いても、納得できる文章は身につかなかった。
パソコンの画面を見れば、PV数が千を突破した。一時間足らずでこれはすごい数字だ。それかもしくは、皆私が落ちるのを待っていたのかもしれない。しかしそのことを救いに思っている私がいる。救いのない救いだ。救いのない救いだけが、私という輪廻を循環している。
パソコンに向き直り、テキストエディターを起動する。それだけの動作に一分かかるボロいパソコンで、私はまた小説を書く。
供養 たかし@ @yukitikoyari
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