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 私は、はじめてミシマと会った夜、ミシマが私に、あんたも? と問いかけてきたことを思い出した。あのとき私は、ミシマが、あんたもルルと寝ているのか、もしくは、あんたもルルの恋人か、そのどちらかを訊いているのだと解釈した。でも、今それが間違っていたことを知る。ミシマは私に、あんたもストレートなのか、と訊きたかったのだろう。あんたも、ルルを傷つけるのかと。

 ルルちゃんが、白くて細い指先で涙を拭った。拭っても拭っても、透明な涙は次々にわいてくる。その姿はやっぱり、とてもきれいで、私がその原因になっているだなんて到底思えないくらいだった。

 「分かってる。ミシマは悪くない。つきこさんも悪くない。私が、馬鹿なだけ。」 

 ルルちゃんが声を震わせた。私は、ミシマがルルちゃんを抱きしめに行くのを待った。でも、ミシマは動かなかった。じっと足下に視線を落としているだけで。多分ミシマも、私がルルちゃんを抱きしめに行くのを待っているのだろう。自分が傷つく覚悟をしながら。

 しばらく無言の間が流れた。三人でいて、こんなに居心地の悪い空白が訪れたことなんてこれまでなかったから、私はなんだか怖くなってしまった。まだ、三人でいたかった。それが不自然なことも、だから傷つくことも分かってる。それでも、まだ。

 無言の間の後、ルル、と、ミシマが低くルルちゃんを呼んだ。

 「ルル、わざとじゃない。」

 ごめん、と、ミシマは言った。私はなにも言えなかった。ミシマが謝っているのが、私だけのことに関してではないと分かっていた。ルルちゃんとミシマには、これまで二人で積み重ねてきた傷痕の記憶があって、それについて謝っているのだ。私だけじゃなくて、何人かの、いや、何人ものストレートの女の子が、ルルちゃんではなくてミシマを好きになったのだろう。それで、こんなふうに不自然な三人遊びを繰り返して、ルルちゃんもミシマも傷ついた。

 私は、なんだか急に自分が脇役になった気がした。主軸にはルルちゃんとミシマ二人の物語があって、私はそこに一瞬だけ居合わせた、ただの脇役。そう思うと、気分は少し楽になった。だって、私は全然主役級なんかじゃないただの脇役なんだから、大した役回りは振られていない。

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