第3話
「ふむ、マスターは現在ギルドを立ち上げ、ルーキータイム特権でガチャを一回引いたんだね...」
アイシャの唐突な発言に、俺は驚きを隠せなかった。
「ちょっと待て、どうして何も話していないのにわかるんだ?」
「えっと...」
アイシャは少し考えるような仕草をする。
「マスターの行動ログのアクセス権を得たから、解析したんだよ!」
「なるほど…そういうこともできるのか...」
俺は感心しつつも少し不安になる。
「いや、待てよ。それは困るな。制御できないのか?」
アイシャは、明るく笑いながら答えた。
「大丈夫だよ!メニュー画面を開いて、ログのカテゴリの中にアクセス権を制御する項目があるから!」
「...そういや、メニュー画面はどうやって開けばいいんだ?」
「メニュー画面と念じるか、メニュー画面のGUIをイメージすれば出てくるよ。こんな感じ!」
アイシャがメニュー画面を出して、それをはたくようにするとクルクルと回転して、こちら側に向いてぴたりと止まった。回転中に青白い粒子のようなものが舞い、その光景に思わず見とれてしまう。
「…よし、やってみるか」
言われたとおりにメニュー画面と念じると、同じような画面が表示された。
メニュー画面には様々なアイコンが並んでいる。コミュニケーション、インベントリ、マップ、システム設定など、まるでゲームのUIのようだ。しかし、それらを操作するのは念じるだけという不思議な感覚に、まだ慣れない。
しかし、すぐに新たな疑問が浮かぶ。
「…どうやって閉じるんだ、これ」
アイシャは親切に説明してくれた。
「一番下までスクロールすると閉じる項目があるよ。そこを見ながら決定と念じれば閉じるよ!」
指示通りにやってみると、無事に閉じることができた。
もう一度開いてスクロールすると、ログという項目を見つけた。アクセス権制御のタブを選ぶと大量の設定項目が表示される。
「ふぅ、結構複雑だな。」
俺は少し疲れを感じながら、で気になる項目を見つけた。
「倫理コードってなんだ?」
すると、アイシャが突然、おどけたような仕草で答え始めた。
「それはですね…」
アイシャは突然、声のトーンを変え、上目遣いで俺を見上げた。両手を胸の前で軽く組み、少し肩を縮めるようにして、首を傾げる。
「うふん」
右手を口元に持っていき、人差し指を唇に軽く当てる仕草をしながら、左目をゆっくりとウインクした。
「あはん」
今度は両手を頬に当て、顔を左右に小刻みに振りながら、わざとらしく顔を赤らめる。その動きに合わせて、ピンク色の髪が揺れる。
「なことを規制する部分ですね!」
最後に、両手を広げて肩をすくめ、にっこりと笑顔を見せた。全体的な動きは大げさで、まるで昔の少女漫画のヒロインを真似ているかのようだ。
この一連の仕草は、明らかに演技じみていて、色っぽさを出そうとしているのが伝わってくる。しかし、その過剰な演技と、アイシャの幼い雰囲気のギャップが、どこか滑稽で愛らしい印象を与えていた。
「うふんあはんってなんだよ」
「そういうことなんです!」
アイシャは再び普段の明るい表情に戻り、両手を後ろで組んで、つま先立ちになって軽くぴょんぴょんと跳ねた。その仕草は、まるで「わかってくれた?」と言わんばかりの、屈託のない笑顔と共に、彼女の無邪気さを際立たせていた。
(だめだこいつ。ポンコツなのか、わざとやっているのか、はたまた天然なのか…)
なんとなく察しはついたが、確認のために聞いてみる。
「R-15とかR-18的な表現の規制コードみたいなものか?」
アイシャはにっこりと笑って頷いた。
「まあいいや。とりあえず、俺の行動ログは非公開にしておこう。」
慎重を期して、自分の行動ログのアクセス権を管理者権限と自分だけに制限した。
システムの安全機能で自分の閲覧権限まで外すことはできないようだ。
「はい、わかりましたマスター!」
アイシャは元気よく返事をした。
アイシャの反応を見ていると、AIとはいえ、彼女にも個性や感情があるのではないかと思えてくる。この世界では、人間とAIの境界線がどこまで曖昧になっているのだろうか。
とりあえず、基本的な操作は把握できた気がする。次は、このギルドをどう成長させていくか考えないとな。アイシャの力も借りながら、少しずつ前に進んでいこう。
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