第18話 藪三友香への粛清

私の...知り合いが強殺で収監されている。

彼はお婆さんを痛めつけ死に至らしめて腕時計やネックレスを奪った。

それから逃走したが犯行の運転役で逮捕された。

そして無期懲役。

それが事の顛末である。


だからこそ私にも汚れた血が流れている。

その事をアイツ。

つまり藪三は突いてきた。

予想はしていたが傷付いてしまった。


だが。


「...俺はそれがあってもお前はお前だと思っている」

「才知さん...」

「何も変わらないよ。お前はお前自身だ」

「...」


私達はイオ〇に気晴らしにやって来た。

ここは駅と隣接する中にあるショッピングセンター。

駅が近いので多分...収益も結構あると思う。

そう考えながら私は才知さんに手を繋がれてやって来る。


「何を見てまわりたい?」

「...じゃあたい焼き屋さんに行ってみませんか。ちょっと小腹が空いたんです」

「そうか。分かった」


それから私はたい焼きの...丁度、あんこが入っている分を注文した。

才知さんはカスタード。

私達は表の椅子に腰かける。


丁度このお店だが。

チェーン店が潰れて改築された。

というか買収されたのである。

それから今に至っている。


「...しかしまぁ。何というか。奴もしつこいな」

「奴っていうのは藪三ですね」

「そうだな。...しつこさだけは頭脳が働くな」

「...ねえ。才知さん」

「ああ」

「私、才知さんが好きです。...その中で奪われたくないのもあるから。...彼女らがまた何かやってくる前に粛清しておきたいです」

「...」


才知さんはスマホを取り出す。

それからそこには...写真が写っている。

浮気写真の様に見える。


「...その手だけは使いたくなかったんだがな。...もうなりふりも構ってられないような気がするから」

「ネット上に暴露するんですか」

「元カノ、元カノと思って居たから止めていたけど。もう我慢の限界だよ」

「応援します」


そして才知さんはそのまま写真を掲載して暴露した。

するとネット民が直ぐに反応した。


(マジかよ。ありえない)

(キモいなぁ)


とか言って、だ。

才知さんはその言葉の数々を見てから溜息を吐く。

それから呟いた。


「これで良かった」


とであるが。

それから才知さんはたい焼きを食べる。

モグモグと食べていた。

私はその姿を見ながら考え込む。


「...これで良かったんですよ」

「...だよな」


だがそうしていると電話が掛かってきた。

その相手は...藪三だった様だ。

彼は「...」と無言で反応し電話に出る。


「もしもし」

「何あれ!?冗談じゃないって!」

「もう一度言うがお前は警告を何度も無視したな。もう許さない」

「それは...!」

「俺は後悔は無い」

「...才知...!!!!!」


そして藪三は歯を食いしばる様な感じを見せる様に数秒間黙った。

買い物客の話し声のみになり。

やがて数秒後。


「...岸和田が許さない」

「お前はそういう所だ」

「そういう所って何。人生を破綻させたんだよ。貴方」

「お前の人生は元から破綻しているからな。何も言うまい」

「...」

「あくまで俺は何度も警告した。何度もな。俺達は危険な目に遭っているからこうしたまで。だからお前が悪い」

「学校からも電話があっているから」

「そいつは何より。じゃあな」


藪三に対してそう告げてから電話を切った才知さん。

それからたい焼きの入っていたパッケージを握り潰してから盛大に溜息を吐き「...」と考え込む。

私はその姿を見てからたい焼きを食べていると才知さんはポツリと言った。


「これでも信じていた」

「...才知さん...」

「あの買い物客みたいに家族が作れるって思っていた。親父の遺体が見つからないしな」

「...」

「それが今やこんなだからな。いい加減にしてくれ。俺だって嫌なのに」

「才知さん。...大丈夫です。私が居ます」


飲み物を注文して来てから彼に渡す。

すると彼は苦笑した。

そして私に頭を下げる。


「有難うな」

「私、死んでも貴方の傍に居ます。だから諦めないで」

「...そうだな。俺もだよ」


そして私達はそのまま飲み物を飲み始める。

コーラフロートなのだが。

甘ったるい味だ。

だけど何か懐かしい様な味もする。


「...なあ」

「はい」

「...こんな俺で御免な」

「...何処が御免ですか?私は...全然そうは思いませんが。いきなりどうしたんですか?」

「いや。何だか情けないよ。色々とな」

「...法に捕まりますからね。だけど法に触れなければ復讐は出来ない。...多少はリスクを犯しても今回はするべき事でした」

「...そうかな」

「そうですね。私はこれからが楽しみです。どうやって地に堕ちるか」


これぐらいキツくしないとどう考えてもね。

思いながら私はコーラフロートを飲みまくる。

それから息を吐き出した。

腹立たしい気分だ。

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