第17話 牧田三毛の秘密


目の前の。

つまり三毛を見ながら俺は考える。

そうか俺はいつの間にか三毛に惹かれていたんだな。

何か...三毛に惹かれるとは俺も困った野郎だ...というか。

まさか三毛を好きになるなんて。


「才知さん」

「...何だ」

「私の。何処に惹かれたんですか」

「...まあその。お前の姿とか色々に惹かれた。優しさとか...何か色々と。本当にな。言葉が上手く出ない」

「才知さん...」

「お前を見る度に赤面するのが分かるんだ。自らがな」

「そうなんですね」

「だから俺はお前に惹かれているんだよ。あくまで多分な」


俺はそう話しながら外を見る。

何か別な感じがする。

特別なそんな感じが、だ。

俺はその事に視線を柵の彼方から外し三毛をまた見る。

すると三毛は顔を赤くした。


「才知さんがそう、その。何かとにかく。恥ずかしいです。ただ、それだけです。すいません。上手く言葉が出てこない」

「はは。それは俺と同じだな。大丈夫だ。気持ちは分かるから。何が言いたいかも分かる」

「...ですか?」

「...俺は...いつの間にかお前に惹かれた。それは紛れも無い事実。だから少しだけお願いがある」

「お願い、ですか?」

「単純な問いかけ。...俺と付き合って下さい」


その言葉に三毛はカァッと赤くなる。

それから唇を噛む様な仕草を見せ。

そして俺に向いてきた。

俺はその姿に...笑みを浮かべながら手を差し出してみる。


「俺はお前と付き合えれば。それ以上の幸せはない。本当に」

「...」

「...今直ぐじゃなくていい。もし良かったらいつか答えを聞かせてくれ」

「私、は...勿論、賛成。つまりイエス。付き合います、が」

「ああ」

「いや。やっぱり良いです。付き合いましょう。才知さん。宜しくお願い致します」


俺の言葉に彼女はそう返事をした。

それから彼女は俺の差し出した手を握る。

そして笑顔になった。

俺はそんな顔に頭を下げた。


「有難う。三毛」

「気にしないで下さい。私は貴方が好き。ただそれだけです。だからお付き合いしたいだけです。此方こそ宜しくお願い致します」


そして俺達はこの日から恋人になった。

それから俺達は握手し合ってからそのままハグをしてから愛し合った。

幸せな時間であった。



才知さんと恋人になった。

まさかの展開であり。

こんな事になるとは思わなかった。

まさか私が。

才知さんの恋人に、だ。


「才知さん」

「なんだ?」

「思えば、私は大変な女の子です。それでも良いんですか。私で」

「俺は構わないと思う部分もある。だから大丈夫だ。有難うな」

「...」

「大丈夫。お前の個性は理解しているから」

「...分かりました。...才知さんがそう言うなら...ぜひ」


私はそう返事をしながらそのまま歩く。

これが夢じゃ無ければ良いけど。

本当に...幸せだよ。

滅茶苦茶、幸せ。

幸せすぎて...ヤバイ。


「...俺...は。...これからは考えて動くよ」

「え?何をですか?」

「簡単に死ぬ様な行動はしない。...お前を守る」

「...才知さん...」

「...頑張るよ」

「分かりました。私もそれに応えれる様に頑張ります」


それから教室に戻ってから鮫島さんに全てを打ち明ける。

すると鮫島さんは驚愕していたが。

やがて納得した様に微笑んだ。



放課後になった。

私は恋人と一緒に帰宅する。

すると...向こうから見知った顔が。

というか会いたくない顔が来た。


「もう接触は無しって言ったろ。お前」

「...その女は危ないよ。...牧田は」

「牧田がどう危ないんだ」

「...牧田。アンタの家族。収監されているんだってね」

「...!」


私は「...」となりながら藪三を見る。

確かにその通りである。

私の親族は...闇バイト応募の強殺で捕まった。

収監されている。

藪三を見据えてみる。


「...そうですね」

「じゃあそういうのって遺伝するでしょ?普通」

「...ですけど...」

「じゃあもう別れた方が」


落ち込む。

本当に...そうなんだよな。

さっき言い掛けたけど。

すると才知さんが首を振った。


「それがどうした」

「...え?」

「俺は牧田三毛の彼氏になった」

「な...!!!!?」

「お前にとやかく言われる筋合いはない。...この子は良い子だ」

「な、何で。それじゃ私を見捨てたの!?」

「何かしら勘違いしている様だが。お前には何も期待してない」


そして私の手を引いてから歩き出す才知さん。

すると才知さんの肩を縋る様な感じで藪三が掴んだ。

それから必死めいた顔になる。


「待って。本当に。可哀想だって思わないの!?」

「思わない。お前の様な屑には」

「...そんな」

「もう何度も言ったけど。二度と現れるな。次現れたらしばくぞ」

「...鮫島君に恩義は無いの。...酷い」

「鮫島には恩義はある。しかしお前にはない。それが落差だな」


才知さんはそのまま歩き出す。

それから私の頭をゆっくり撫でてくる。

笑みを浮かべてきた。


「すまないな。もう」

「...ごめんなさい。才知さん」

「...ああ」

「私の家族は...強殺。強盗殺人を犯しています。無期懲役。...それを、言わなかった」

「...言えなかった、だろ」

「そうですけど。こんな形になるなんて。ごめんなさい」


涙を浮かべる私。

それから涙を流し始めた。

するとその涙を才知さんは優しく拭ってくれた。

優しいなぁこの人...本当に。

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