第16話 貴方らしく
☆
才知さんしか考えられない。
どうしたら良いのだろう。
私も大概に変態だとは思うが。
そう考えながら私は溜息を吐く。
そうしていると声がした。
石丸愛(いしまるあい)だ。
同級生のモデルの女子である。
顔立ちは大人びている感じの、だ。
「何、溜息ばかりついてるの。全く。良くないよ。それにしけた面は良くない」
「確かにね。有難う。愛」
「でも何かあったの?何か複雑そうな顔だけど」
「うん。何も無いよ。有難う。ただ...」
「あ、もしかしてぇ?彼氏キュンの話?」
か、彼氏。
いや違うけど。
そうなったら良いなって思うけど違う。
考えながら首を振る。
「彼氏とは思っているけど違うよ。関係性が濃厚なだけ。それだけ」
「それだけ!?つまらないでしょ!」
「つまらない事は無いけど...まあ色々、濃厚な日々だよ。本当に」
「いや、気持ちは分かるけど!何それ?付き合っちゃいなよ」
「確かに軽くはそうは言えるけどね。だけどこれにも理由が沢山あるからさ。付き合うのが難しいよ」
「いや...よく分からないなぁ。幾ら何でも相手も陥落しそうだけど。貴女の行為に」
「それは無いよ。だけど私は諦めてないから」
私はそこまで話してから窓からまた外を見る。
すると愛は前に腰掛けた。
それから愛は前屈みになる。
「何で一緒なの?考えた事ある?」
「何で一緒かって?それは才知さんを助ける為。サポートする為だよ」
「うーむ。本当に良く分からないなぁ。何でそれで...何も起こらないのかそれも謎だなぁ。本当に何も起こらないの?」
「うん。本当に何も起こらない。私がアレなだけかもしれないけど」
「あれっていうのはつまり根性がないって事?」
「...うん」
思い出す。
あの時の事を。
何というか恥ずかしい事ばかりだった。
だけど...まあ。
充実していた気がする。
「...何か馬鹿みたいな事ばかりしてるかなぁ。あはは」
「馬鹿みたいな事?」
「うん。本当に馬鹿な事ばかり。逃してばかり。最悪だよ」
「逃してばかり、か。まあでもさ。死んでいる訳じゃ無いよね?お互いに。だからまだ希望はあるんじゃ無い?」
私にそう言葉を発する愛。
その言葉に涙目で頷く。
すると愛が頭を撫でてきた。
「やるべき事はしっかりやらないと本気で逃げられるよ。愛しい人は愛しいから直ぐに別の人が見つかっちゃうよ」
「...だね。確かにね」
「私はそうして男を逃したしね。あははw」
笑い話では無いと思うのだが。
そう考えながら苦笑いを浮かべる私。
それからチャイムが鳴り、愛は「じゃあ。戻るから」と笑顔で言ってきた。
私はそんな愛に手を振り返す。
そして私は教科書を準備しながらまた外を見てみた。
☆
あっという間に時間は過ぎた。
それから四限目が終わり私は才知さんの元に行く為に立ち上がる。
そして歩き出した。
才知さんの教室に向かい覗く。
「やあ」
「あ。鮫島さん」
「元気か?」
「そうですね。元気です。あ、才知さん居ますか?」
「ああ。鹿野...ってかアイツどこ行った」
鮫島さんは教室を見渡す。
それから首を傾げてから私を見る。
「すまん。トイレかも知れない。そういえば少し前から見てないしな」
「あ、そうなんですね。分かりました。探してみます」
「ああ。そうしてみてくれるか。宜しく」
私を見ながら鮫島さんは苦笑した。
それから鮫島さんは頷いてから笑みを浮かべてから手を振った。
私は直ぐに才知さんを探した。
するとお手洗いから才知さんが出て来た。
「才知さん」
「あ、ああ。三毛か」
「才知さん?何でそんなにビックリしているんですか?」
「い、いや。何でもない。それにしてもどうしたんだ」
「お弁当です。また作りましたので食べましょう」
「あ、ああ。成程。了解」
「?」
才知さんの様子がぎこちない気がする。
何故かは分からないけど。
そう考えながら私は才知さんを見る。
「才知さん。今日はハンバーグ弁当になります」
「ああ。ハンバーグ弁当か。美味しそうだな」
「ですかね?あはは。そうおっしゃって下さり感謝です。作りがいがありました!」
「ああ。有難うな。本当に。美味そうなのは本当に嬉しい気分になるよ」
「はい。そんな先輩の幸せそうな顔を見たら私まで嬉しくなります」
私はそう言いながら才知さんを笑顔で見る。
すると才知さんは私をビクッとしてまた見た。
私は?を浮かべながら才知さんを見る。
才知さんはそのまま歩き出した。
「才知さん。顔が赤いですよ?どうしたんですか?熱...でもありますか?」
「え!?い、いや。そんな事は無い、が。そう見えるか?すまないな」
「すまないって。謝る必要性は無いですが...ただ心配です」
「...すまん。本当に何でもない。有難うな」
才知さんはそれ以上は何も言わなかった。
私は才知さんに付いて行く。
それから才知さんと一緒に屋上までやって来てからドアを開ける。
そして開け放った世界に笑みを浮かべる。
「良い景色ですね」
「そうだな。確かにな」
「才知さん」
「ん?」
「二人で一緒にこの景色が見れて幸せです」
ふとしたそんな言葉だったが。
才知さんはマジに赤面して目を回す。
それから俯いた。
何か本当に様子がおかしい。
一体何があるのだろう。
「...才知さん...?」
「...落ち着いて聞いてくれるか」
「...はい?」
「俺は...お前が好きだ」
その言葉に私は硬直する。
それから私もかぁっと赤くなる。
そして目をパチクリする。
なん、え?
「待って下さい。それは...どういう意味ですか」
「...俺は知らぬ間にお前に惹かれていたらしいんだよな」
「...え」
「...」
「...」
心臓がバクバクする。
それから全てが波打っている。
え?夢じゃなくて?
私は動揺する。
そして「...」となってから俯いた。
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