第15話 陥落
☆
岸和田という男に遭遇してから私は怒りしか無く。
それから...どうしようも無い感情が渦巻いており...。
こういう時は、と思い私は隣の部屋を訪問した。
勿論、その部屋は才知さんの部屋である。
私は才知さんを見ながら「...」となる。
言葉が出ない。
思っていると才知さんは苦笑しながら頭を撫でてきた。
私の様子に彼は切り込んでくる。
だから好きなのだけど。
「どうした。顔が引きつってるんじゃねーか」
「...そんな事は無いですよ。...ただ私...疲れているんです」
「そうか。具体的には?」
「...具体的には多分、私...岸和田の事で恐れている。それで多分...ですけど。...疲れているんだと思います」
「そうなんだな」
「はい。私...怖いんですよ。いつか才知さんを失うんじゃないかって」
「ああ。殺されるとかでか」
「...それもあります。...でもそこじゃないです」
私は才知さんを抱き締めた。
それから泣き始める。
涙が止まらない。
どうしたものか、と思う。
「つまり私、貴方が洗脳されて...あの女の元に行ってしまうんじゃないかっていう恐怖があります」
「...成程な」
「それで...何だか感情が不安定です。高ぶったり無敵だったり...だけど沈む。そんな感じです」
「...そうなんだね」
一体私は何がしたいのか。
そう思いながらそのまま嗚咽を漏らす。
すると才知さんは私を抱き締めた。
私はまさかの行動に才知さんを見る。
才知さんは優しく頭を撫でてくる。
「...頑張ったな」
「才知さん?」
「俺、何も分からなかったよ。お前の真の姿が。...隠さずに暴露して有難うな」
「...才知さん...」
「俺は...これからもお前を見守る。大切にする」
「それはつまり付き合うと?」
「違うけどな」
「あ、残念です...けど」
私は才知さんを抱き締め返した。
それから私は才知さんの胸の中に納まる。
暖かい...とても暖かい。
その事が本当に嬉しく...そして。
また独占欲が高まった。
「...私も愚かですね」
「...え?何がだ?」
「きっと大丈夫だと思いますけど。...でもこうして安心できないのが...馬鹿野郎ですね。私も大概」
「それは仕方が無い。...お前の特性だけど...だけどきっと変容出来ると思うから。...大丈夫だ」
「...才知さん。有難う御座います」
「ああ。なんていうか。...きっと大丈夫だから。そんなに不安になるな」
それから私はゆっくり才知さんから離れた。
そして私ははにかんだ笑顔を浮かべる。
すると才知さんはボッと赤面した。
いつもの赤面だが。
何か違う感じがする。
「才知さん?」
「な、何でもない。すまない」
「...???」
私は良く分からないまま才知さんを見る。
才知さんは「...」となりながらそのまま黙ってしまう。
その事にますます???となった。
☆
何だ今の鼓動は?
相当に心臓がビックリした。
というか...そんな感情が...彼女へ。
つまり三毛に発生する訳が無いのだが。
「...」
三毛が俺の家で料理を作ってごちそうしてくれて隣の部屋に帰った時。
俺の心臓はバクバクしていた。
というか彼女にこれを伝える訳にはいかない気がする。
「何故こんな事に」
まさか俺が陥落した?
アイツに対してか?
そんな馬鹿な事ってありえるのか?
「...クソ。魔性の女め」
そんな事を言いながら俺は悪態を吐く。
それから「...」となりながらそのまま起き上がる。
それから水を飲んだ。
「...だがもし陥落したとすると。...その先、どうすんだ」
思いながら俺は考え込む。
だが答えは浮かばない。
まるで答えが浮かばないだが。
まさか俺からアピールする訳にはいくまい。
「クソ。全く。マジのマジに魔性の女め」
そんな事を呟きながら俺はそのまま寝転がる。
そして俺は考え込む。
だけど...答えは見つからないまま。
そのまま寝てしまった。
☆
翌日になってから俺は起き上がる。
何というか三毛が居なかった。
何故居なかったのか分からないが心臓の鼓動が落ちがっかりする感じがした。
駄目だそんな馬鹿な事が。
「...畜生め」
俺はそんな事を思いながら準備をする。
それから玄関に鍵を掛けてから表に出る。
そして俺は髪の毛を触りながら歩いてから登校をする。
すると声がした。
「おはようさん」
「ああ。おはよう。鮫島。元気か」
「そうだな。...まあいつも通りさ」
「...そうか。なら良いんだが」
「...なあ鮫島」
「?...どうしたんだ。真剣な顔をして」
「俺は陥落したみたいだ」
「陥落?何だそれは」
「...ああ。いや。実は」
そして鮫島に説明する。
すると鮫島は笑みを浮かべた。
それから俺に向いてくる。
「認めろとは言わないが。...そろそろ自分に素直になっても良いんじゃないか」
「素直になる?」
「お前は多分、自らで自らを卑下しているから周りが見えなかったんじゃないか」
「...そうなのかな」
「だと思うが」
「...そうか」
俺はその様に呟きながら歩く。
鮫島は俺の背中を叩いてくれた。
そして歩く。
通学生に混じって。
「...鮫島ならどうするよ」
「俺か。...俺だったら気付かせるかな」
「...反応が見たいからか」
「そうだな。...女子って可愛いしな。そういう時の反応が」
「...そうか」
考え込む俺。
それから俺達は歩いてから高校までやって来る。
そして俺は鮫島と教室に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます