第10話 浮気の原因の一つ

そんな不良の鮫島だが。

俺に...彼女を紹介したのだが。

その事を自らを罵り激しく悔やんでいた。

彼女の名は...藪三友香という。

元の原点を辿ると...鮫島が俺に紹介したのだ。


「...悪かった。お前に最悪な女を...寄こしちまったな」

「気にすんなマジに。...俺は確かに最悪だと思ったけどそれはもう良いんだ」


俺達は中庭に出て自販機でジュース買ってから座っていた。

自販機の横にベンチが有るがそこに座っている。

何というか...こういう所だよ。


鮫島が良いのは。

コイツの性格はマジに...本当に。

良い奴だ。


「全ての原点は俺だ」

「...原点はお前だが付き合うって言った俺も悪い」

「...あのクソ女。本当に情けない真似をしてくれたよな。死んでくれよマジに」

「落ち着け。鮫島」


缶を握りつぶしてからジュースがあふれ出す。

それはまるで血液の様な色をしており。

怒りに満ちている事を伺わせた。

というか鮫島がここまでキレるのは相当に珍しい。


「マジに許せん」

「...ああ。気持ちは分からんでもない。...有難うな。そうやって怒ってくれて」

「...怒る事しか...出来ないしな」

「そうだな。まあなっちまったもんはしゃーない」

「まあそうなんだけど...本当になんだろうな。...なんなんだろうな」


鮫島はジュースが垂れる手を見る。

そしてハンカチでそれを拭いた。

それから「幾ら幼馴染でも紹介すべきじゃ無かった」と怒りを交えて答える。

俺はその姿に「落ち着け」と言い聞かせる。


「...キレてもしゃーない。...本当にな」

「分かるけど。お前の為にならなかったのがな」

「...ああ」

「だけど俺は...嬉しかった。素直に。...だって牧田も居るしな」

「ああ。牧田三毛さんな」

「...そう。彼女は良い子だ」

「...お前の新しい彼女になるか?」

「...今は何も考えられないけどな」


俺はその答えながら「...正直、そんな気分じゃないんだ」とも言う。

それに...悲しませるようなことをしたく無い。

そう思いながら俺はペットボトルの中身を全部飲んだ。

それから空を見上げる。


「ったく。忌々しい天気だな。...雲が多いぜ」

「それは確かにな。雨でも降っちまいそうだ」

「そうだな」


そう言いながら俺はペットボトルをゴミ箱にぶち込む。

そうしていると「先輩」と声がした。

背後を見ると牧田が居た。

俺は「?」を浮かべる。


「やっと見つけました。この場所にいらっしゃったんですね」

「ああ。探していたのか」

「はい。お弁当を渡す為に」

「...は?」

「...オイコラ。テメェどういう事だ」

「先輩にお弁当です。私のお弁当食べて下さい」


鮫島が威嚇する様に俺を見る。

おいテメェ。

先程の俺への感情はどうした。

そう思いながら俺は苦笑しながらも恥じらいつつ。

そのまま牧田からお弁当を受け取る。


「三毛」

「...あ。豊子ちゃん」


背後からいきなり牧田を呼ぶ声がした。

そこには豊子という少女が居た。

顔立ちは幼い感じだが...綺麗な感じの女子。

1年生だろう。


「初めまして。先輩方。私、豊崎豊子(とよさきともこ)って言います。牧田三毛の友人です」

「ああ。よろしく」

「よろしくな」


そして俺は伸びをした。

それから大欠伸をしてから「じゃあ戻るか」と鮫島を見る。

鮫島は「まーなー。良いよなー。弁当とかー。うらやまー」と何だか俺を馬鹿にしていた。

コイツな。


「ったく。そういうのはジョークだけど。浦山だよ」

「...はは。そうか。すまない」

「でもおめでとうだな。また好きになってくれる子が現れて良かったな。お前をさ。...だってお前...」

「...それは言わない約束だ」

「...そうか」


鮫島は「んじゃ黙っとくわ」と苦笑いで「じゃあお邪魔虫は帰ります」と手を振って去って行こうとする。

俺はその姿に「鮫島!」と声を出した。

すると鮫島は「?」を浮かべてこちら側を向く。


「サンキュな」

「...気にすんな。...だけど例の件。宜しくな」


そして鮫島は先に教室に帰った。

すると牧田と豊崎が聞く。

早速、という感じで、だが。

牧田が「彼...何かあったんですか?」と聞く。

俺は「...彼には妹が居てな。その子は筋肉が萎縮する難病でな」と答える。


「...え?そうなんですか?」

「ああ。だから今度、自宅を訪問してやるんだ。...彼女は優しいから」

「...じゃあ私もそうですけど豊子ちゃんも行っても良いですか?」

「え?でもそこまでしてもらう義理は無いぞ」

「いや。行きたいんです。是非」

「お友達になりたいですね」


牧田は目を輝かせる。

それから満面の笑顔を浮かべた。

俺はその姿に恥ずかしくなりながら「分かった」と頷いた。

それから後で鮫島に言ったら驚いていたが。

了承してくれた。

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