第3話 空手、柔道、弓道

後輩が俺に迫って来る。

何でそんなに迫って来るのか分からないが。

俺は恐怖に少しだけ怯えながら近所のコンビニに来る。

するとそこに...来栖南子(くるすみなみこ)が居た。

コンビニバイトの同級生の少女である。


「オス」

「...よお。南子」

「どうした?しけた面して」

「...ああ。ちょっとな」


右側を結んだ可愛い髪形の褐色肌で八重歯が特徴的な空手3段の少女。

まあ正直、やられたらやられたままだろう。

怖いもんだ、と思える少女だ。

そう思いながら買い物かごを持ってから移動していると南子が俺の顔を覗き込んだ。


「暗いねぇ。顔が」

「そ、そうかな。すまない」

「まあでも聞いたけどね。浮気されたんだよな?藪三とかいう奴に」

「...ああ。聞いたのか。そうだな。浮気された」

「んで別の女を作ったってな」


思いっきり唾が噴き出た。

どういうこった。

そう思いながら南子を見る。

「お前な!」と言いながら叱る。


「その顔は冗談でも満更でも無さそうだな?」

「まあ確かにな。だけどそういうのは止めい。俺はまだ彼女を彼女と思って無いんだから」

「ありゃ?そうなの?」


そう言いながら南子は「ちぇー。つまらん」と言いながらも仕事をする。

根っからはクソ真面目な野郎だ。

だからこうして仕事をする。

俺はその姿を見ていると「ぎゃあ!」と声がした。

男性客が叫んだ様であるが。

どうしたのだろう。


「...?...ぎゃあ!!!!?」


外を見て俺も悲鳴を上げた。

そこに牧田がこっちを睨む様に見ていた。

迫力が有る様な顔をしている。

俺は「何をしている!牧田!!!!?」と怒る。

すると牧田は「別の女...」と俺に呟いた。


「いやまあそうだけど。恋人じゃねーぞ」

「そうですか?でも私から見たら仲が良すぎるかと...」

「お前...」


すると南子が「何事?」という感じで覗いて来た。

その南子は牧田を見て目を丸くする。

それから「君...もしかして彼の彼女?」と余計な事を言った。

牧田はハッとしてから「はい♡」と返事をする。


「嘘吐くな」

「ぇえ。でも先輩。私達は結ばれる運命ですよ。将来的に」

「お前とそんな契りをかわした覚えは無いぞ!?」

「えぇ...」

「何でお前がドン引きしてんだ!」

「いや。そこまで好き好きコールが出ているのに?」

「あのな!」


俺は額に手を添える。

それから「牧田。取り敢えずこっちは腐れ縁の女子。来栖南子だ。...彼女ではない」と説明した。

すると牧田は「そうなんですね」とニコッとした。

誤解は解けた様だ。


「...それにしてもすいません。南子さん。貴方...どこかでお会いしませんでした?」

「...あ。空手大会の時の?」

「そうですよね?やっぱり」

「待て。空手大会に何で居るんだ牧田」

「私?私、初段ですよ?黒帯です」

「...は?」


ドン引きする俺。

すると横に居た南子が「まあ何というか私は途中の試合でねん挫したから今の階級に居るのー」と爆笑し始めた。

笑い事では無い。

そもそも牧田がそんなに強いとか聞いてない。


「ま、牧田。間違っても殺すなよ。人を」

「何と勘違いしているんですか。先輩...?」

「いや。お前の場合怖いから」

「はい?」


そんな自覚在りませんけど?、的な顔をする牧田。

いや待てお前。

そう思いながらも何も言わない事にした。

すると南子が「まあ怖いよねぇ」とけたけた笑う。


「ま、待て。南子。変な事を言うな」

「え?何で?...私、強いから。牧田さんに殺される事は無いよ?」

「無いよってお前」

「まあでも牧田さんは強いと思う。柔道も弓道もやっているっぽいしね」

「...へ?」


じゅ、柔道に弓道?

俺はゾッとしながら牧田を見る。

「その。柔道なら日本一の地位を持っています」と笑顔。

その言葉に顔が引き攣った。

それから「牧田。マジに俺を殺すなよ」と忠告する。


「だからそんな事しませんって」

「まあ...お前の事だから信頼しているけど...」

「私が先輩を殺す事はありえません、が」

「が、何だ」

「アハハ」

「アハハ、じゃない!!!!!」


が、って何だ!

その、が、ってのは!

俺は恐怖に思いながら青ざめる。

すると南子が後頭部に手を回して笑みを浮かべた。

「にしても仲良いね」と笑顔で、だ。


「仲良くしてやりな。先輩♪因みに牧田さんがアンタの浮気とかの事で悩み始めたらアンタを殺すよ」

「俺はそんな気はない...というかお前な!殺すな。っていうか店員が言う言葉じゃねー!」

「因みに牧田さんって確か...郵便局強盗に遭遇した時も拳銃持っていた犯人の肩の両肩の関節を脱臼させて壊したよね?あまり噂として聞かないけど」

「そ、それはどうかな」

「...」


信じられん。

そう思いながら俺は青ざめながら牧田を見る。

南子の言葉に恥じらう牧田。

嘘か本当か。

分からない...んだが...。


「牧田。お前何処まで...」

「で、でもあれは非常事態だったし!」

「マジかお前...」

「新聞には記載されてないよ。だってその場に居た人たちが証言しないもん。犯人より関節外した人質が怖いって言ってから」

「も!南子ちゃん!」

「...」


マジかコイツ。

神様...怖いっす。

そう思いつつ俺は青ざめながら2人を見ていた。

そして暫くしてから俺は食材を買い始めた。

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