劣等感の輝き

 「私はただ自分らしく生きているだけだが、たとえそれが世界と調和しない性格であっても、自分らしさを貫くことによって、異類として讃えられることになるのだ…」



 「貴方は大丈夫です。ただ単に成長の岐路に立っているだけです」と医者は優しく言ってくれた。だが、同情を引こうとしているのか、人生に愛されないふりをしているのか、私の内なるに根付いた反骨精神が強く反応してしまった。

 「違う、私は有病だ」と。



 いつからともなしに、自分が既に一人であることに気づいていた。人との接触が益々嫌になり、一人でも十分に生きていけると確信するその信仰が、私の自信を常に打ち砕いていた。楽しむことを望んでいないわけではない。ただ笑う能力を失ってしまったように感じたわけだ。マスクを着けるのも、他人に悪印象を与えたくないからに過ぎない。

 「当時の私、自身が無罪だと断定することもできなかった。なぜなら、私の封じ込められた心を開けた彼女にも罪があったからだ」



 孤独に慣れた私がある日、一人の少女と出会った。彼女に対する好意を認めたくないと思いながらも、彼女の残香に惹かれたことは確かだった。かつて私は、人生に小さな幸運が降り注ぐことを夢見ていたが、結局、悲しみは喜びと共に沈み込むものだと気づいた。彼女があまりにも華やかであるため、私は彼女を得る勇気がなかった。彼女の声は世界で最も甘美な果実であり、笑顔は世界で最も澄んだ源泉のようで、遠くから眺めることができても、軽々しく扱うことができなかった。しかし、まさにこんな悲惨な私が放つ雰囲気が、虹の降臨を齎した。

 「可笑しいことに、終幕が見えているのに、私は断然と前に進み続けた」



 私は非常に卑屈で、彼女からの返事を直ぐに得られないと、焦燥感に駆られる。他人が彼女に近づくのを見ると、私は他人を憎み、彼女の自制のなさにも憎しみを感じてしまう。しかし、私は立場もなく、自分には嫉妬する資格がないと自認しながらも、その感情を無理に飲み込むしかなかった。

 「彼女には彼女の生活があり、私にも私の私事があると自分に言い聞かせようとしたが、立場が反転すると、その理屈は全く通用しなかった」

 

 平穏無事な私がただ一人の注意を引きたいと演じる道化師なのは、実はその人からもっと温もりを得たくて、わざと無関心を装っているからだ。人々は口先では自分を如何に高潔であるかを語るが、本当に欲望の前に立つと、その偽りの仮面を脱ぎ捨てるものだ。ところが、そんな求愛行為が意外にも天から恩恵を受ける結果となった。私達の関係は急速に良好なものとなり、デートをし、普通のカップルがするべきことを体験した。彼女のいない生活がどんなものなのか、考えるだけで恐ろしいほど怖かった。恐らくそれは星のない夜空のように陰鬱であるに違いないと思われた。


 「原則に則ると、私は必ずしもあなたより高貴で、優秀でなければならない」

 しかし、彼女は本当に素晴らしく、隣に咲くバラさえも三分の一ほど劣って見えるほどだった。あの日、彼女は熱を帯びた肌を指針として差し出したが、私はそれに抗う力を持たなかった。私は嬉しいと同時に、不安も次々と押し寄せてきた。私はずっと考えていた。私は見た目も才能もなく、お金も名声もない。こんなの私は一体どうしてあなたの評価に値するのか。しかし、君はいつも純粋な笑顔で自分の野心を隠している一方で、私はその代償を支払い続けている。


 「自殺について考えたが、私は所詮勇気がない臆病者だ。そして、私にモチベーションを与える動機は常に愛だ」

 私は夜も眠れず、食事も水分も取らずに過ごし、三日も経たずに彼女の前で倒れてしまった。悲しみも屈辱感も感じず、むしろ僅かに快感さえ感じた。私は彼女が、この窒息するような愛を受け入れてくれることを心から願っているが、多分それを実現するのは無理だろうと思っていた。



 「自分の劣等感を憎むが、後悔など一度もなかった。ただ、もし自分が他人からの愛を一度も受けたことがないのなら、なぜわざわざ悲劇を演じる必要があるだろうか」

 『この濁った泥沼の中で、貴方も彼女も清らかであるが、「泥より出るも染まらず」ことが本当にできる人が、世の中にどれほどいるのでしょうか』


 「彼女が今、私を見るその目は非常に悲しげで、その悲哀が私にも同情を感じさせる。望んでいた結末を手に入れたはずなのに、なぜ私もこんなに辛いのだろうか、先生」

 「多分、貴方は彼女に謝りを欠けていると思います。」では、今日の心理相談はこれ

で終わりましょうか。お疲れ様でした。

おやすみなさい。



 星のない夜空…のように陰鬱する…と今の私は感じた。

 星は平凡な夜空を引き立てる存在だったが、私は自らの星光を磨滅してしまった。


 「お休み」




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