金子ふみよ

第1話

 煙草を吸うのは何年ぶりだろう。なんとなく、そうだ、なんとなく息を吹きたくなったのだ。いや、その煙の中に理由はある。あの人だ。あの人が気になって仕方ないのだ。あの人は私が煙草を吸うなんて知ったら、渋い顔をするかもしれない。そんな話題を耳の中に残っている。嫌われるため、私は喫煙しているのだろうか。そうかもしれなかった。現れては消える煙の中に、私の中のあらゆる想起が、思いが混在して見えなくなってしまえば、ずっと楽になれるだろうと私は灰を落とした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

金子ふみよ @fmy-knk_03_21

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ