第一章 一話
領地の近隣からの依頼で度々魔物の討伐、薬草の採集を任せらることがある。
依頼は領地内にある酒場に集まり、冒険者は提示板に張り出された情報を元に依頼を選ぶ。そこから受付が依頼の情報と冒険者の力量を見極め、受理し冒険者は指定された期間まで解決するということになっている。
王都にあるノアリル魔法学園に在学していた時に魔術、剣術を習っていた私は兄程ではないが多少戦闘の知識はあり、幼い時から仕えてくれている護衛のレシアと一緒に残った依頼書を受けている。
街道にフォレストウルフが出没して、行商人から被害が出ていると酒場の提示板を見た私はレシアと一緒に被害情報のある街道に向かっていた。
レシアは私の2歳上で昔から仕えてきた騎士の家系の令嬢だ。私が5歳の時に護衛騎士として仕え、剣の師匠でもある。
「そろそろ、情報にある目的地に着きます。注意してください」
「分かった。レシアも気を付けて」
この街道は森が近くにあり、そこから飢えた魔物が出て、食料が積まれた荷物を襲うという事があり、そうなる前に領主が兵士と遠征し、間引くのだが今回のフォレストウルフは逃げ延びた魔物で行商人を見つけ、食料を奪ったという。
商人には怪我はなかったようだがいつ人を襲うか分からない。そうなる前に討伐しようということだった。
「発見された数は4頭、油断すると大変なことになります。今から臭いでおびき寄せるので周囲を警戒してください。スウォン様。」
レシアは収納袋から生肉を取り出し地面に放り投げた。その生肉は加工された物で主に魔物をおびき寄せる為に作れたものだ。つまり魔物にとってはいい肉だがこちらからしたらとても臭く、レシアは鼻を摘まんで眉を寄せている。
しかし、これを使うと他の魔物を引き寄せてしまう為、普段は使わないのだが森林全体を2人で捜索するとなると時間がかかってしまう為今回は使うことに。
生肉から遠く離れた位置から待機して、数時間待つと3匹のフォレストウルフが現れた。
大人より一回り大きいフォレストウルフは鋭利な爪と牙が特徴であれを受けると肉が抉れ、最悪切断される可能性がある。
そして、もう1つの特徴が森に生息している為、奇襲に優れており、森での戦闘となると非常に困難になる。
「今から、弓で1匹仕留めます。スウォン様は残りの二人が接近した際もう一匹お願いします」
「分かったわ」
レシアは背中に抱えている弓を構え、肉に群れるフォレストウルフに向けて、矢を放つ。幼少の頃から剣術と弓術を鍛えられたレシアは外すことなく、1匹を仕留めた。
残った2匹は倒れた仲間に気付き、こちらに近づいてくる。
レシアはすぐに腰の剣に持ち替え、私を守るように前に立つ。
私は基本的に魔術で戦うスタイルで主に遠距離と中距離で戦うタイプ。けれど、レシアから剣術も教わっており、レシア程ではないが一般人くらいは戦えると思う。
「大気よ集いし、刃と化せ。ウィンドウエッジ」
接近してくるフォレストウルフに私は杖を構え、風魔法を放つ。杖から無数の刃がフォレストウルフを襲う。危険を察知したのか何本か避けられたが傷を負わせられることが出来た。そして、怯んだ隙をレシアが逃さず、もう一匹を剣で切りつけ倒す。もう片方は仲間がやられた事に激昂し、こちらに向かってくる。真っすぐ飛び込んできたのを避けて、持ち替えていた細剣で体向けて突く。貫かれたフォレストウルフはその場で倒れ動かなくなった。
「スウォン様無事ですか?」
「大丈夫」
レシアは慌てて心配そう駆け寄ってくる。
「やはり、2人だけで狩りなんて危険です。もう1人募集するか、待って他のパーティーと組んだほうが良かったのでは」
今回の討伐依頼は本当はレシアからは止めらていたのが、私がこれ以上被害が出るとここでお世話になっている人達に行商人が来なくなって、困るとか言って無理を通してもらった。というのが建前で実践経験を積んでおきたいというのもあった。
勿論、人助けというのもあるが今後の事を考えたときに自分の身は自分で守れるぐらいの力をつけたかった。
「ここって、冒険者が少ないし。他の所に出払っててほとんどいないから、来るのを待ってたら被害が拡大してたかもしれないよ」
「しかし、こうも危険な状況になると私も庇いきれません」
「だから、私も戦えるようにレシアから剣を学んでるんでしょう。大丈夫だって」
ずっと、心配そうに見つめてくるので私は笑ってそう返すと、レシアからため息が返ってきた。
そのあと、私たちはフォレストウルフの討伐証明を採る為、側にいる2匹の牙を採取し、弓でいられたもう1匹も採取しようした。
「ウオオオオオオ‼‼‼‼‼」
突如森の方からかなり大きい鳴き声が聞こえてた。
段々近づいくる。次第に足音も聞こえ、森からもう一匹のフォレストウルフが飛んできた。
2人は何が起きたのか理解出来ず、茫然と眺めていると森から声の主が現れる。
全体が緑色の大人二人分の大きさで2本の角と牙があり、左手には冒険者から奪ったのであろう大剣を持っている。色々な箇所に傷がある。
「……オーガ」
レシアはすぐに我に戻り、剣を構える。
「スウォン様すぐに逃げてください。早く」
「……っ!」
レシアの声でやっと我に戻り、現状を理解したが既に遅くオーガはものすごい勢いでこちらに接近し大剣を振り上げ、目の前のレシアは飛ばされていた。
目の前のことに思考が追いついておらず、気付いた時にはレシアが倒れていた。
「レシアァァアアアーーー!!!」
そして、目の前のオーガは鳴き叫ぶ私を見て下卑た笑いで見つめていた。
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