第31話「銀髪とクリスマス」その④
※
「さて、そろそろプレゼントの時間ですねっ!」
テーブルに並べられていた食べ物類があらかた片付いた頃、金糸雀が言った。
「プレゼント?」
首を傾げる雪月。
「ええそうです、クリスマスと言えばプレゼントです! とはいえサプライズのパーティですからお姉ちゃんはプレゼントを準備できていないでしょう。でも大丈夫! 私がお姉ちゃんに差し上げるためのプレゼントを用意しておきましたから!」
「……気遣いありがとう、金糸雀。だけど安心して頂戴。クリスマスだもの、私もあなたと――それから朝日くんのためにプレゼントを準備していたのよ」
「ええっ!? お姉ちゃんが私に!?」
「何を驚いているの。毎年準備しているじゃない」
「そ、そうでした。ええと、とにかく私、プレゼント取ってきます!」
金糸雀が立ち上がり、自室へと駆けていく。
「すまん金糸雀、僕の分も取って来てくれ!」
分かってますよ、という返事が廊下の方から聞こえた。
「……朝日くんも準備してくれていたの?」
「当たり前だろ。本当はこれで僕の誕生日を祝ってくれた分をチャラにするつもりだったんだけど……雪月が僕にプレゼントを用意してくれているっていうならそういうわけにはいかないよな」
「そんなことないわ」と、雪月は言った。「朝日くんが私のために選んでくれたプレゼントでしょう? その気持ちだけでも嬉しいの。とは言っても、そもそも見返りを求めてあなたの誕生日をお祝いしたつもりはないのよ。ただ私がそうしたかっただけ。朝日くんが喜んでくれたのなら、それで良かったの」
「……そう、か」
僕はなんだか胸の奥が苦しくなって、それ以上言葉が出てこなかった。
これってまさか――心筋梗塞!?
「どうしたの朝日くん、胸の辺りを押さえているみたいだけど」
「いや、何でもない。気にしないでくれ」
「そう? だったら、私もプレゼントを取りに行っていいかしら」
「ああ、そうしてくれ」
雪月が部屋から出ていく。
しばらくすると胸の痛みは引いて行った。
分かってる。これは心筋梗塞とか気管狭窄とかそんなもんじゃあ断じてない。もっと何だか凄まじいモノの片鱗なのだ。
たとえば、恋とかいう……。
「しょーがないですね朝日さん、優しい私が持ってきてあげましたよ―――って、どうしたんですか胸を押さえて。病気ですか?」
「いや大丈夫だ、気にするな」
「狭心症の悪化を防ぐには生活習慣の改善が一番です! 高血圧の原因になるような食べ物は控えるべきですね、朝日さん」
「さっきピザとフライドチキンをドカ食いしてた奴に言われたくないけどな」
「し、仕方ないでしょ美味しかったんだから! はいこれ、朝日さんが準備したプレゼントと……私からです」
「え、僕にも?」
金糸雀が差し出したのは、小さな包みだった。
「はい。このクリスマスパーティが開催できたのも朝日さんの協力があったからですからね。お礼も兼ねて、プレゼントです」
「あ……ありがとう」
意外だった。
まさか金糸雀からプレゼントをもらえるなんて。
日頃あんなに僕のことをボロカスに言っている金糸雀だけど、可愛いところもあるんだな。
「開けてください」
「いいのか? じゃあ、早速……」
可愛らしいピンク色の包装紙を開いた中から出てきたのは長方形のパッケージだった。隅には『0.02』と記載がある。
って。
「お前これ、コン〇ーム……」
「安全第一でお願いしますねっ! 私まだ姪や甥は欲しくありませんから!」
「バカ、どういうつもりだっ!?」
「えっ。まさか避妊しない気だったんですか……!?」
「そ、そういうことじゃなくてだな!」
何から説明すれば良いのか分からん!
こいつら、姉妹揃って脳みそがピンク色なんじゃないのか!?
いやまさか、外国じゃ当たり前のことなのか……?
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