あの部屋で
僕の空は
あの狭い部屋の中で
君との少ない会話に閉じ込められている
夕暮れの差し込む
かすかに風が吹く
もう
知っていたのだ
君がどこに行くのかも
でも
どこに僕の言葉があっただろう
その横顔は
悲しい信仰のように
今も
僕の瞳の奥で
灰色に輝く
来なかった明日を見送るように
それは
虹色に輝く一基の墓標
残りすくない僕の心のかけらを
そこに振りまこう
君の名前も
君の影も
君の声も
僕にはもういらないのだから
あの頃の流行り歌が流れる
僕はあれから何をしていたのだろう
心にもない
言い訳を自分にしながら
誰にも心を与えなかったじゃないか
だから僕は笑う
自分も
そして自分にこれから起こる恋の顛末にも
それが
たとえ残酷な沈黙を隠していたとしても
笑うしかないのだ
行き倒れた
僕の恋
僕は拾わない
それは暗いアスファルトで
雨に濡れ、
黒く染まり流れてゆくから
それを見つめて
僕は嘘をつくだろう
それは僕のものではないと
物語は
君の退場で
終わったのだと
そう、人に語るだろう
そうして
僕はまた自分の中の灯りを
消す
あの二人の部屋は
今も
あるだろうか
どこよりも明るい
暖かな日差しの当たるあの部屋は
ドアを開けると
そこに
何があったのだろう
それに気づかなかった僕には
もう
生きる糧は失われていたというのに。
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