第19話 悪魔達の嫉妬とコスプレ
「お嬢様、ぎゅ〜♡」
「きゃー捕まっちゃった!えへへ」
メアリーが家に来てからは、シュナとメアリーはラブラブであった。メアリーがあざと可愛いのだ。シュナはそういう子が大好きなのでついつい可愛がってしまう。
仕方ないね、可愛いもん。
「お嬢様、きゅんを拾いに行きませんですか?」
「お散歩ってこと〜?うんうん行く〜!」
アスモデウスはそんな2人に嫉妬して、ついツンケンしてしまうのである。
「アスモデウスも行く?」
「いえ、いいです」
「…?そっか!」
キッパリ断るアスモデウス。シュナは不思議に思った。いつも1つ返事で了承なのに。が、その日はあまり気にしなかった。
また別の日。
「お嬢様、新しいきゅんを買いに行くです!」
「お買い物ってこと〜?うんうん行く〜!アスモデウスも行く?」
「いえ、お気になさらず」
「?そっか」
2回目で、なんだかアスモデウスが素っ気ないな。と気づくシュナ。が、解決する方法も原因も分からないのでそのままにしておいた。
メアリーに嫉妬しているのは、何もアスモデウスだけじゃなかった。他の悪魔4人も、また嫉妬していたのだ。
「あの新人…我が君を独り占めするとはいい度胸ですね」
「断ってたのアスモデウスよね…?でも気持ちは分かるわ」
「最近2人ラブラブですよね」
「そうだな」
「確かにな!」
皆同意見である。
なので悪魔の5人で、シュナの気を引く方法を考えることにした。
「主様はメアリーさんみたいな可愛い方が好きなんですよね。」
「左様」
「だけど俺らに可愛さなんてねぇだろ。パイモンは兎も角よ」
「うーん…じゃあ、私達もメイド服を着てみるのはどう?」
「それいいですね。意外性もありますし」
「え、それ僕もですか?」
「当然です」
悪魔5人の結論は、メイド服を着る、であった。
ということで5人は服屋さんに行った。メイド服も取り扱っているお店だ。軍服や修道服、ナース服なんかもある。
「折角ですし、色々買っていきましょう」
「アスモデウスってノリいいわよね」
なんたって全員美形である。モデルレベルで何でも似合うのだ。
「アメイモン、これ似合いそうじゃないですか」
「ほう。侍か」
「あぁ、確かに似合いそうですね。武人って雰囲気、アメイモンにもありますし」
「では俺はそれも買おう」
アリトンに勧められて、アメイモンは侍のコスも買うことにした。
オリエンスは海賊の服を見つけた。
「お、これ良くねぇか?」
「オリエンスに似合いそうですね。メイド服の後に着るといいんじゃないですか?」
アリトンが笑顔で褒める。
それは胸元がはだけたワイルドな服であった。
「どうせならアリトンも買おうぜ。」
「いいですよ」
ということで、アリトンとオリエンスはそれも買った。
「見てこれ!セクシーですわ」
パイモンが見つけたのはバニーコスであった。
「…アメイモンも着る?」
「「「ぶっ」」」
アメイモンは大柄な男である。サイズも無さそうだ。
「…居た堪れない光景になるぞ」
「…やめとこっか」
「そうしておけ」
パイモンはメイド服に加えてバニーコスを買った。
「アスモデウスは他にも買わないのかしら?」
「あぁ、私は普段執事服でコスプレみたいなものですし。いいかなと思いました」
「そんなこと言ったら僕達存在がコスプレみたいなものじゃないですか?。悪魔ですよ、悪魔」
「一番乗り気だったのに。それじゃあ、アスモデウスもバニーコス着る?細いしサイズあるんじゃないかしら」
「いいんですか?パイモンさん程とはいきませんが、似合いますよ私」
アスモデウスは自信満々である。アスモデウスは元来自信家な方であるので。
「じゃあ決まりですわね。メイド服の後の話になりますけど」
ということで会計を終えた5人は、家に戻ったのであった。
家に帰ったシュナは、あ、私疲れてるんだなと思った。目を擦り、んー、ぱっ、と目を開いてみるが景色は変わらない。
「「「お帰りなさいませ、お嬢様/我が君/主様」」」
隣に居たメアリーも、何事!?と目を見開いて、瞬いている。その表情も可愛い。
何事かと言うと、悪魔達5人がメイド服を着ているのである。各々の髪の色の差し色が入っていて、よく似合っている。
ではなく。
「え、え?皆どうしたの?」
「我が君、可愛いですか?私達」
「え?ちょっとまって、理解が追いつかない」
メイド服からのこの質問である。シュナの混乱も頷けた。
「最近、メアリーちゃんに付きっきりじゃない?
「メアリーさんと同じメイド服を着れば見てもらえるのでは?と思いまして」
「あぁ、成程…とはいかないけど。そんな放ったらかしてたかな、ごめんね」
「主様の分も買ってみましたよ。着ますか?」
「え、あるの!?それじゃあ着てみようかな…」
ということでシュナも着てみることにした。
薄ピンクの差し色が入ったメイド服である。
着てみた。
「百億万点です、我が君」
「顔がいいですわ」
「神々しいですね」
「似合っている」
皆高評価だ。神になって良かった。こういうのも似合うんだから。
「可愛いですわ!お嬢様♡」
メアリーはそう言うと、シュナに抱きついた。
「!!!それですよ、そういうの!ずるいですメアリーさんばかり」
「ご、ごめんなさいなのです?」
「え、じゃあアスモデウスもハグしたらいいんじゃない?」
シュナは当然のように言った。アスモデウスは目に見えて狼狽える。
「…嫌じゃないですか?」
「嫌なわけないじゃん!可愛い部下だよ、皆」
「ほんとですか。…では」
「うん!」
シュナは両手を広げてアスモデウスを迎えた。
アスモデウスはいそいそとシュナの元へ行く。そして、その腕の中に収まった。
両方メイド服なのでちょっと異様な光景である。だが、アスモデウスは満足であった。
アスモデウスの方が身長が大きいので、なんだか覆いかぶさっているみたいになる。
「ッスー」
「なに吸ってるの、ふふ」
「お花の匂いがします」
「シャンプーかな。いつでも抱きつきに来てもいいよ」
「はい、お言葉に甘えます」
「良かったわね、アスモデウス」
「一件落着なのです!良かったのです」
「そういえば、もう1着ずつ買ったんですよ」
「へぇ!いいね」
「シュナ様とメアリーちゃんにもバニー服を買いましたわ」
「そうなんだ!」
こういう服を自信満々に着れるのも、神になったお陰だ。スタイルが自由自在なので。神で良かった!
バニーはアスモデウスも着た。
「なんというか…」
「似合ってるんですの。でも…」
「目のやり場に困るわね…」
他6人の視線は若干下半身に向いていた。
「すみません、色々大きくて」
「私の可愛い上着貸してあげるよ。腰に巻いて」
「ありがとうございます」
アスモデウスはシュナのフリフリの白い上着を腰に巻いた。
シュナはいつも亜空間に上着を何着か入れているのだ。
因みにバニー自体はかなりに似合っていた。細マッチョなアスモデウスの、スラッとした手足がバニー服から伸びているのだ。髪も長いので、ほぼ女の子である。
「似合ってるぜ、かなり」
「あぁ」
「スタイルいいですもんね、アスモデウス」
「他の皆も似合ってるよ。アメイモンとか実際にいそうだもん」
「そうか」
アメイモンは、偽物の刀を持って切る真似をしてくれた。
「おぉ〜」
「カッコイイですわ」
「アリトンとオリエンスも似合ってるね。カッコイイよ」
オリエンスははだけた胸元から、豊かな胸筋が見えていた。
アリトンはアスモデウスと同じ細マッチョな類なので、オリエンス程の胸筋はない。だが、筋肉質なのは確かであった。
「お宝よこせ!ってな」
「ここら一帯は僕達のものです!なんて」
「それっぽいなのです!」
2人も偽物の剣をこちらに向けて、台詞を言っている。似合っている。
「皆で写真撮ろっか」
「私の一眼レフ使いましょうか」
「ありがとう!」
皆で写真を撮った。これでまた思い出が増えた。
「背景のセットとかさ、神力で作れるよ。やらない?」
「いいですね」
ということで、玄関ホールの空いている所にセットを作ってみた。
海賊の2人は船、侍のアメイモンは瓦塀と提灯、バニーの私達はキャバクラ風のセットで写真を撮った。
本格的になってとても面白かった。
「はい、チーズ!」
カシャリ、カシャリ。思い出の増えていく音がする。
どれもプロみたいな構図で、アスモデウスは写真の才能もあるのかと感嘆した。
その日から、アスモデウス達との外出頻度も元に戻り、メアリーもそこに加わる形で落ち着いた。
かくして、アスモデウスの嫉妬は収まったのであった。
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